夜のピクニックの書評・感想

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夜のピクニック (新潮文庫)

北高の高校最後の大イベント、歩行祭。
名前だけ聞けばのほほんとしたものに思えるが、中身は違う。かなりハードなイベントなのである。
朝っぱらから何度か休憩や仮眠を挟みながら、夜通し80キロを歩きとおすという、北高の伝統である歩行祭。修学旅行がない代わりのイベントであるが、卒業生は皆口を揃えて、修学旅行より歩行祭の方がいい、という。まあ、どっちも経験しているわけではないから本当は比べられないはずなんだけど。
今日はいよいよその歩行祭の当日だ。
西脇融は、親友である戸田忍と学校へ向かっている。高校最後のイベントだ、忍と一緒にゴールしたいのだけど、膝が保つだろうか…。歩行祭のラストはマラソンだ。記録を狙っている忍に迷惑を掛けられない。そんな思いに逡巡する朝であった。
一方、甲田貴子も、親友である美和子と共に学校に向かっている。抜けるような青空だ。家を出る直前まで持って来るかどうか迷っていた日焼け止め、やっぱ持ってくるんだったかな。
そんな迷いも一瞬、貴子は今日の歩行祭に思いを馳せる。
今日の歩行祭は、貴子にとって一つの賭けだ。三年間、誰にも言うことができなかった秘密。今日賭けに勝ったら、新しい一歩を踏み出そう。未だに、賭けに勝ちたいのかどうなのか、自分でもよくわからないのだけど。
全編、ただ歩いているだけのシーンの中で、受験を控えた高校生たちが小さなドラマを繰り広げる。歩行祭という日常ではない環境の中で、夜の闇に溶け込ますように誰もが自分をさらけ出していく。小さな奇跡が、歩行祭というイベントの中で咲き誇る。

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