とるこ日記の書評・感想

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とるこ日記 〜“ダメ人間

本作は、結構ネガティブな引きこもり作家三人が、何故かトルコに旅行に行くという、その珍道中を本にしたものです。まあ実際は、WEB連載を経て書籍化に至る、という感じなのだけど。
さてそれではまず、三人の紹介を簡単に。この三作家の共通項は、全員「j-books」という、ジャンプ系の小説賞を受賞してデビューした作家、ということです。
乙一。言わずとしれた超有名作家。わたくしとあることからサインをもらうという僥倖に恵まれる。神様仏様乙一様、という感じである。結構ネガティブで引きこもり。
定金伸治。「ジハード」という小説でデビューしたらしい。知らない。歴史小説なのにライトノベルレーベルでも本を出しているらしい。大阪出身。乙一と仲がいいらしい。こちらもネガティブ。
松原真琴。「そして龍太はニャーと鳴く」でデビュー。知らない。女性だったりする。身長が低いらしい。ジャージが好きらしい。猫が好きらしい。絵がうまいらしい。二人よりは社交的。でもそれなりにネガティブ。
なんなんだこの三人は、という感じです。そろいもそろったり、という感じでしょうか。いろいろな縁で出会い、そしてよくつるむ三人だそうで、本当に成り行きで、完全にプライベートでお遊びでトルコに行くつもりだったのに、そんな声を聞きつけた集英社が、お金を出すから旅行記を書いてくださいよ~ってなもんで、最終的にこんな形で本になることになったらしい。そんな経緯以上に適当な本で、その適当さ加減がメチャクチャ面白くて笑える。
そもそも、結構リアルに引きこもりの人間が、わざわざ外国まで旅行に行こう、という時点で、既にメチャクチャ面白いではないか。
本作は、まあそんなトルコへの旅行記という感じの本ではあるのだが、言ってしまえば、これを書くのにトルコに行く必要はあったのか?という感じの本だったりもします。帯にはそれぞれの著者が、こんな風に書いています。

乙一:耳寄り情報や参考になるような文章は、まったく何も一切合切書いておりません。

定金:旅行記的な発見の言葉はまるでない

松原:お二人から学んだことは、いかにダメに生きるかということでした。

これからでも、どれだけ本作が、旅行記というものからほど遠いか分かっていただけるだろう。本作をより正確に形容するなら、
『乙一・定金・松原という面白三人組のキャラクターをよく知ろう!その舞台は、豪華にもトルコにしてみました』という感じです。ホントです。
さて本作は、構成でもかなり奇妙な形を取っています。説明しにくいのだけど、ページの左半分のメインの文章を定金が書き、ページの右半分で左半分の内容に対してツッコミを入れる、というそういう形式になっています。それなりに読みづらいところもあるんだけど、面白い構成だなと思いました。読んだ人はわかるかもしれないけど、構成は「小生物語」に近い感じがします。
さて、なんでそんな奇妙な構成になったのか。そこには、乙一に仕掛けられた壮大な罠が存在していたからで、なんと乙一は本作に、書き下ろしのショートショートを載せているのです。本作を本にまとめ上げるための合宿のその初日に言われて、三日で書かなければならないという無茶苦茶なスケジュールが乙一に与えられたため、乙一の余裕がなくなり、仕方なく定金だメインの文章を書く、という経緯があったようです。
しかもその書き下ろしの小説は、旅行中にポロっと言ったある一言のために書かされるはめになるという悲しい経緯もあるわけで、ある意味で乙一は災難だったなという感じです。でも、乙一のショートショートがおまけでついてくるというのは、本作のかなりの魅力的な部分だったりもします。
彼らは、トルコという異文化においてもやはり結構な引きこもりだったようで、そういうネガティブな旅行記というのも面白いものです。椎名誠の探検シリーズのような旅行記にしたかったようだけど、まあそうはいかないでしょう。

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