箱庭図書館の書評・感想

1622views黒夜行黒夜行

このエントリーをはてなブックマークに追加
箱庭図書館

本書は、乙一がWEB上で連載していたものなんですが、一般の人からボツ原稿を募集して、それをリメイクする、というかなり変わったやり方で生まれた作品です。乙一は、小説のアイデアがなかなか出てこないらしく、ボツ原稿を集めてもらえれば仕事できます小説書きます、という話を編集者にしたところ、こういう企画が出来上がったんだそうです。

「小説家のつくり方」
小説家の山里秀太は、発売した小説にはじめてあとがきを書いてみた。それは、秀太が作家になるきっかけとなる出来事だった。小学校時代の担任の先生とのささやかなやり取りが描かれている。
秀太には、潮音という姉がいる。この姉がまたとんでもないのだ。
本を読むのを止められない人なのだ。
歩きながら本を読んでいて惹かれそうになった、本を読んでいる時に転んでもどこまで読んだか分かるようにページに指を挟んでいる。キリの良い所まで読まないと、雪の降りしきるバス停のベンチに永遠座り込んで本を読んでしまう。そんな、時に命に関わるような本の読み方をしている姉だ。
秀太はそんな姉に、あとがきの感想を求めた…

「コンビニ日和!」
酒屋をコンビニっぽく変えてみました、というような店のレジで閉店を待っていた僕。しかし閉店間際に、一人の男が入ってくる。手ぶらで、時折レジにいる僕を確認するような目付き。何か聞きたいことでもあるのだろうか?
同じ学校に通っている島中さんに急かされ、その男に閉店時間を過ぎていることを知らせるべくレジを出た僕だったが…。

「青春絶縁体」
文芸部に入った僕は、たった一人の先輩である小山雨季子とだけは気軽に、というか、お互いに罵詈雑言で、と言った方が正しいけど、とにかくそういう感じで喋ることが出来る。二人しかいない部室の中で、いかにお互いを罵り合うか。結局のところそれしかしていない二人の時間は、僕にとっては実に貴重な時間なのだった。
クラスでは、僕は浮いている。というか、そもそも存在を認識されているのだろうか?青春、という言葉からイメージされるようなことはまるでない。ひっそりと、誰とも喋ることはない。僕は、文芸部の部室でだけは饒舌になれるのだ…。

「ワンダーランド」
僕は小学校へ向かう途中、鍵を拾った。本当は、警察とか先生に届けるべきなのかもしれない。優等生を演じている僕は、なおさらそうするべきだっただろうと思う。しかし、結局そうはしなかった。僕はそれを自分で持つことにした。
その鍵に合う鍵穴を探す。
いつしかそれが、僕の日課となった。
様々なところに鍵を差してみる。普段歩いたことのない道を歩いてみる。行ったことがないくらい遠くまで行ってみる。そうやって僕は、その鍵に合う鍵穴を探し続けた。見つけたい、という思いと同時に、見つからなければいい、という思いも持っていた。
ある日、町の北側の大きな川の傍の調査をしている時だった。僕は、一軒の空き家を見つけた…。

「王国の旗」
小野早苗は、授業が退屈で学校を抜けだした。目の前に鍵の差さった車があり、そのトランクに隠れることにした。すると車が動き出してしまい、結局何時間も身動きの取れなかった早苗は、見知らぬ町に辿りついた。
そこで、ミツと名乗る少年と出会う。ミツ君は早苗を、ある場所へと案内してくれた。
それは営業していないボーリング場だった。
ミツ君はそこを、僕達の王国だ、と表現した。そこには、子供たちがたくさんいた。夜の間だけこのボーリング場に『帰って』くるのだ、という。そして朝になると、みな両親の子供だというフリをしてひっそりと時間をやり過ごす。
そういう子供たちを集めたのが、この王国だったのだ。

「ホワイト・ステップ」
珍しく大雪となった文善寺町で、僕は非常に奇妙な足跡を見つけた。あるはずのない、どうやってそんな足跡がついてのかまるで理解出来ないような足跡を。まるで透明人間が自分の前を歩いているのではないか、そう錯覚してしまうような謎めいた足跡だった。
僕はその足跡の謎を解くべく、その足跡を追うことにした。
しばらくするとその足跡が僕のことを認識し始めたらしい。向こうには、僕の声も動きも感知できないようだけど、雪面の変化だけは捉えることが出来るようだ。そこで僕は、雪の上にその謎の足跡の持ち主へのメッセージを書いてみたところ…。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く