増大派に告ぐの書評・感想

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増大派に告ぐ

本書は最新の日本ファンタジーノベル大賞受賞作です。誇大妄想にとりつかれたホームレス・大熊と、どうしようもなく狂気に惹かれる中学生・舜也の二人が主人公です。
大熊は、リアカーを引きながら、かつて住んでいたことのある団地の傍にある公園にやってきた。増大派の連中から姿を隠しつつ、団地に囚われているはずの母親を助けるためだ。ヒロシマという男が遺した赤いキャップを被り、アルバートと名付けた犬を連れて、大熊は公園での生活を始める。
大熊にとって世界は、増大派と減少派に分かれている。ほとんどの人間が増大派であり、しかもその数はどんどんと増えていっている。ありとあらゆる組織や集団の中にはびこり、取り返しのつかないことになっている。世界は増大派に乗っとられようとしている。大熊は数少ない減少派であり、増大派と減少派を見分ける特殊な能力を磨いてきたがゆえに、なんとかここまで生き延びることが出来たのだ。
大熊は、船長との思い出や自分の出自なんかを振り返りながら、自らの妄想の世界の中でもがいていく。
舜也は団地に住み、団地の中学校に通っている。今ではなりを潜めたものの、かつては理解できない理由で母親や自分たち兄弟を殴ってきた父親とは、もう二年ほど話をしていない。家の中の空気はギスギスしている。それは主に、舜也と父親が作り出している。それを取りなそうとする母親と弟のあれこれさえも、より空気を寒々しくするだけだ。
舜也の弟がある時、公園に男が家を作っていると言ってきた。赤いキャップを被った男だ。何をしているのか分からない。遠目で見る限りでも、ちょっと頭がおかしいように思える。しかし舜也はその男に何故か興味を惹かれてしまう。舜也は幾度となく男の姿を見に行き、やがて接触を持つようになる。
舜也も、行き詰まっている家族や、ままならない友人関係なんかを抱えながら、窮屈な世の中を生きていく。

増大派に告ぐ

増大派に告ぐ

  • 小田雅久仁

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