心にナイフをしのばせての書評・感想

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心にナイフをしのばせて (文春文庫)

本作は、28年前の酒鬼薔薇事件と呼ばれるある少年犯罪を題材にしたノンフィクションです。
ある高校で起こった事件で、ある少年が同級生の少年を殺し首を切断し、その後誰か別の人間に襲われたかのように偽装をした、というような事件です。
本作では、その被害者家族のその後という部分にスポットを当てて話が進んで行きます。
とにかくこれを読む限り、被害者家族のその後の人生は、まさに地獄と言っていいかもしれません。被害者の少年を溺愛していた母親はその後2年くらいほとんど寝たきりの状態で、また髪もすぐに真っ白になってしまったようです。家族の中ではもちろんその話はタブー。泣くことも笑うことも、いやそもそも会話がまったくないというような状態がずっと続きます。
被害者少年の妹は兄とは対照的に反抗的で、それが兄の死後さらに悪化していきます。周りの大人の無理解に嫌気が指し、それに対抗するためにどんどんと反抗的になっていってしまいます。母親は完全に憔悴しきっていて、一家を支えていたのは無言の父だけでした。
しかしその父も、さすがのあまりの重圧だったのか、時々涙を見せます。逃避したかったのか、パチンコにはまり込んだ時期もあります。家族はほとんどバラバラになりかけていました。
長い年月を掛け、その間に癌によって父親は死んでしまいましたが、なんとか落ち着いた生活をすることが出来るようになり、こうして当時の話をすることが出来るようになったわけです。その苦労に満ちた道のりを母と妹が語っています。
そして、恐らく本作のメインだろうという部分が後半のほんの僅かなページを割かれて書かれています。それは、少年を殺害した加害者のその後についてです。
著者はありとあらゆる手段でそれを調べ、加害少年が現在何をしているのかを突き止めます。なんとそれは弁護士でした。かつて殺人を犯した人間が、現在は弁護士として地元の名士として通っているというわけです。
当時から謝罪はなく、また慰謝料も碌に払われてはいませんでした。本作の中に、被害者家族が経営していた喫茶店が危なくなってきたので、加害者のその弁護士に今お金が必要なのだという話をするくだりがあります。ちょっとその時の向こうの対応がありえないと思いました。社会的に成功はしているのかもしれないけど、とてもではないけどこれでは更正しているとは言えないだろうと思いました。
殺された側はこれまで死ぬような思いをして辛い人生を乗り越えてきたのに、殺した側は優遇され守られ今では弁護士として優雅に生活をしている。どう考えてもこれは間違っているでしょう。
というような、かつての衝撃的な事件を追ったノンフィクションになっています。

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attorney at usattorney at us
すまん訂正
実際読んでないのでなんともですが、恐らくノンフィクションとはいえ設定上ところどころ実際の話と変えているのかも

attorney at usattorney at us
28年前じゃないよ

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