「脳科学」の壁 脳機能イメージングで何が分かったのか (講談社プラスアルファ新書)のまとめ

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「脳科学」の壁 脳機能イメージングで何が分かったのか (講談社プラスアルファ新書)

第一章 ヒトは「脳」から離れられない

人間の脳構造は「原因」を探し求めるように出来ている。乳児の随伴性(因果関係)を知ろうとする実験について記述。生後二~三か月の乳児でさえも、慣れ親しんだパターンが働かなくなると、新たなパターンを探そうとする。
宗教も科学も、「原因」を探す脳の作動原理に由来する。人間が「原因」を説明しようとすると、同じような結論に達するのは脳機能に共通した作動原理のため?

脳の仕組みが分かりにくい理由。
①複雑
 脳の神経細胞=140億以上、一つの神経細胞に1000以上のシナプス。
 そのつながりは、多様であり解析困難。
②脳を解明しようとする脳
 実験主体と対象が同じ。自我意識が生まれる仕組みの解明は困難。

第二章 脳科学氾濫の系譜

デカルトは人間の自意識の源は脳の松果体にあると考えていた。
フランツ・ヨーゼフ・ガルの骨相学。頭蓋骨の形を計測する事で気質や能力が決定されるとした。

春山茂雄「脳内革命」、養老猛「唯脳論」について、脳科学ブームの切っ掛けとして以下の問題点を記述。
 ・脳パターンが同じでも、症状が同じとは限らない。
 ・性格や行動パターンを客観的にカテゴライズ出来るか?
 ・脳波のパターン=脳活動とは限らない。

脳機能イメージング方法について
①脳波検査
 膨大な数の脳内神経細胞の電位変化の総和を頭皮上においた電極に
 よって計測する。
 メリット:速い反応を検出可能。
 デメリット:電位変化の総和であるため、脳内局在を調べるのに
       不向き。電位を発生させている神経細胞のグループを
       判定出来ない。
②PET(陽電子放射断層撮影)
 陽電子崩壊を起こす化合物(放射性同位元素)を測定対象者に
 静脈注射し、放射線を計測する事でニューロンの活動状況を調べる。
 デメリットは解像度が低い事。計測対象とする脳部位は立方体で
 一辺が3m以上でなければならない。また、時間的な血流の変化を
 調べるには計測対象者に複数回の静脈注射が必要になる。
③fMRI(磁気共鳴画像装置)
 水素の磁気共鳴現象を利用。
 fMRIでは、静脈注射の必要がなく、一辺が1mの立方体を計測可能。
 ミリ秒単位の速い過程は抽出不可能。
 網膜刺激が後頭葉の一次視覚野に届き、一時運動野の運動中枢、
 脊髄を経て、筋収縮をするまでの活動を時間的推移を含めて観測
 する事は困難。
④脳磁図
 ニューロンの電流の位置と強さを測定する。
 脳に垂直な電流や、脳の深い個所で発生する電流は、脳表面での
 磁場を測定出来ない。

第三章 前頭葉ブーム

【前頭葉】
人間の大脳皮質の1/3を占める。前頭葉にある前頭前野に局在するとされる2つの機能について記述。
①ワーキングメモリー
 ワーキングメモリーは最も短期間のスパンを持つ短期記憶。意識的な
 行動を直近の経験と結びつける。
 情報を一時的に保存し判断に結び付ける。
②心の理論
 他人の心を読む能力について。
 腹側内側前頭前野に障害がある人は「サリーとアンの課題」等の
 課題の正解率が低い。

脳内可視化技術の進歩によって、前頭葉を鍛えるとする「学習療法」が流行した事を記述。著者は学習療法に懐疑的。
 

第四章 脳科学の到達点と限界

自己意識や特定機能が脳内に局在するという考え方に対する批判。

脳内の神経細胞に、筋肉のように負荷をかけ、修復する過程で筋繊維が太くなるような事はないと記述。むしろ行動に慣れると脳活性部分は小さくなる。脳機能イメージングの問題点として活性化している部位が重要な役割を担っているとは決定出来ず、また脳全体のネットワークを把握する事も出来ない。
自閉症スペクトラム(アスペルガー者)への脳内可視化実験について記述。P146

第五章 脳機能イメージングで何が分かるか

脳機能イメージングは未だに脳機能を解明するには力不足。脳機能が解明されたのではなく理解が進んだとする。著者は脳機能イメージングが臨床応用に活用される例として脳腫瘍やてんかん外科手術の切除範囲決定について記述。脳磁図によって、脳の重要機能を知る事が役立つとしている。

発達障害の脳内メカニズムについても記述。
ADHD:左右の大脳半球を結ぶ脳梁の断面積が前頭部で少し小さい。
    大脳基底核の一部である尾状核が小さい。
自閉症:小脳がやや大きい。
    大脳白質の容積が大きい。
脳機能イメージングによって、様々な課題を実施する際の血流変化を分析可能になった。自閉症者では、顔の認知(側頭葉の上側頭回、紡錘回)、心の理論(前頭前野)、選択的注意(前帯状回)、情動(偏桃体)等の血流増加が見られない。

著者は発達障害の原因の解明は遠いとしているが、脳機能イメージングによって得られた脳内の特定部位の問題ではなく多数の部位のネットワークの問題とする知見は重要であるとしている。

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