ヤオイとは何か

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タナトスの子供たち―過剰適応の生態学

★1つにするか★5つにするかで迷う本

「コミュニケーション不全症候群」の続編。ヤオイ、特に「初期段階=最も社会に対する毒性が強かった時代のヤオイ」の発生を中心に、その意義と変遷を語る。

個人的にはヤオイそのものにはあまり興味がないのだけれど、なぜヤオイというものが誕生し、それは女性たちにとってどのような意味を持つのか、という点についてエッセイみたいな軽いノリじゃなくてガチンコで思考してる過程を読めるので、内容が妥当かどうかという点は置いといて、めちゃくちゃ楽しい。

正直にいうと、評論としての評価はめっちゃ低い。Amazonレビューの「ああまたかよ」という☆2つのレビューが私の感覚に最も近い。それでもそのぶっとんだ発想や感性が、読み物としてむちゃくちゃ面白い。

そのため、知識を得るためではなく「こんな人もいるんだ」というのを知る意味で読む価値アリと思う。 この本を読んで作者の意見に賛同する必要は全くないが、この人の存在を認められる人間になりたい(読んでる最中はすごいストレスたまりましたけどね)

コミュニケーション不全症候群=ヤオイ、ダイエット、オタクについて

ヤオイは男どうしの恋愛という、HIVに通じる究極の不毛をのみ良しとする愛と、性のトーナメント社会のパロディです。
オタクはみずからの内宇宙にのみ閉じこもり、その中でのみ生きようとするいわばサイバー的に敷衍された唯我論です。
そして摂食障害にゆきつくダイエットはすなわち、消費文化のグロテスクなパロデイであったといって良いと思います
それらの現象は「過剰適応」であったけれども、それぞれに非常に重要な、現代文明の歪みやひずみのパロディであったために私の目を引いた。つまりそういう形で歪みやひずみが噴出してきたこととして私の注意をとらえたのでした

(ヤオイの語源はヤマなし、イミなし、オチなしらしいですが、初期はまさに「究極の不毛」を志向していたというのだから、この語源はぴったりということになりますね。現在はヤオイ自体が一定の市民権を得た結果、いまは逆にお約束や安定したオチが強いシンプルさが受けたりしてるそうです。ありえない設定ゆえに現実と混同する心配もなく、葛藤なく荒唐無稽な恋愛を楽しむという感じでしょうか。異種族ファンタジーやラノベの一種になってきているのかもしれません)

ヤオイは「社会的影響力を持たぬ弱者によるささやかな異変だからこそ、耳を傾ける」である

ヤオイは決して革命的に社会をいきなり揺り動かすほど重大に思われるわけじゃない、だから社会を運営していると自負しているような層にとっては相変わらずなんらまともに扱う理由もないと思われ、見過ごされるであろう小さなムーブメントです。しかし、それをこそ本当は人々は注目すべきだと思われるのです。

全てはなぜて世はこともなし、と思いたがりがちな適応した感性に対して、
「どうしてヤオイなのか、疑問を持って」
「なんで男どうしなのか、興味を持って」
「どうして私達が男どうしにしか興味を持てないのか、考えてみて」
という叫びを投げつけてきているのです。
その叫びを無視してはいけない。

一番恐ろしいのは、この世界はこれでいいのだ、と思い込むことです。
「正常のまま異常な事態に対応する勇気や叡智や体力を持っていない弱者」は様々な異常な過剰適応のかたちで「そっちの方向でいいのか?」と社会に向かって叫び続けている。彼ら彼女らを通して、「現代とはどういう時代なのか」「現代への適応とはどういう意味を持つものであるか」を考えるべきです。

ヤオイが多分「正常」な人からはこの上もなく滑稽だったり不可解だったり奇妙なかたちでつげる言葉を笑わないで、一回、それに心を開いてみませんか?そのむこうにひろがる、現代の闇が見えてくるかもしれません。そして、その闇のなかにあるのが、ほんとうの意味でのたったひとつの私たちの明日かも知れないのです。

世界の可能性を広げる考え方

ヤオイに限らず、タナトスというもの、
すべてのマイナスに向かう志向性というものを、
ただ否定すべきマイナスとしてではなく、
マイナスに向かうというもう一つの可能性として考えることができるのではないか。

タナトスはひとつのれっきとした可能性です。
それはエロスとおなじだけ無限の可能性をはらむエネルギーの場です。
それを認めればわたしたちの世界は倍に広がります。
そうすれば、私たちはこの現実の人口超過の世の中で
「自分の場所」をめぐって人と争いあわなくても済むかも知れません。

サイバースペースも滅びもタナトスもそれは可能性なのです。
今まで自分が当然としてた疑いもしなかったことことと反対の考え方について、
試しに受け入れるだけでも、十分にやってみる価値はあると思います

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