「円高の正体」 円高やデフレの仕組み

2332views折笠 隆折笠 隆

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円高の正体 (光文社新書)

概要

円高やデフレの仕組みを平易に解説。その脱却策として、マネタリーベース(供給貨幣の総量)の供給増を主張する。著者はドイツ証券会社のエコノミストで、恐慌や脱デフレに関する著書多数。

為替とは何か?

◆為替とは、海外の商品を取引するときの金銭的なやり取りのこと。
 ・取引に参加するのは銀行や生保、個人投資家など。その8~9割は投機=差益を得るため
 ・レートは参加者の思惑や行動で決定。ドルの価値が下がると多数が「思えば」、ドルは下落する

円高・円安とは何か?

◆円高には良い面と悪い面がある。
 1…海外旅行や、輸入品を買う人にとって円高は得
 2…輸出産業にとって、円高は不利。輸入産業にとって、円高は有利

円高の場合、妻が輸入品を安く買えても、夫が輸出産業勤務で給与が下がれば得とは言えない。トータルでの評価が必要となる。

◆では、国全体で見るとどうか? 今の円高は、明らかに「悪い」と言える。
 ・グラフにすると、円高の進行にリンクして名目GDPが減少している
 ・円高が続くと、賃金を下げるよう圧力がかかり、国内雇用が海外へ
 ・“韓流推し”は、ウォン安円高で韓国のコンテンツが安いのも一因か?

「よい円高」論のウソ

◆専門家が「円安は悪い」と主張する根拠は以下の通り。いずれも否定できる。
 1…強い円への志向/通貨の強さが国の強さとみなす説。実際は円高になると名目GDPが下落
 2…通貨暴落のトラウマ/暴落は変動相場制では起こりにくい
 3…円高不況は克服可能という精神論/過去の例をみると、克服時は実は円安の要素があった

※2は、通貨アタックによるタイバーツ暴落などの事例を警戒したもの。が、現在の日本に対し投資家が通貨アタックを行っても最終的に円高に収斂して儲けが出ない。攻撃してこないはず。

為替レートはどのように動くのか?

◆為替の動きを見る有効な指標は2つ。
 1…ソロスチャート/二国間の流通貨幣量の比率。単純な計算式ゆえ、軽視する専門家も
 2…購買力平価/ある同一商品の価格差と為替レートは近似するはず

◆グラフにしてみると、ソロスチャートとドル円の為替レートはきれいにリンクする。
 ・02~07年はリンクせず、有効性が疑問視された
 ・が、同時期は銀行の投資意欲が弱く実質的な流通量が少なかった。例外と言える

◆為替レートを動かすのは「予想インフレ率=将来の物価の予測」の変動。
 ・例えば、アメリカのインフレ率が今後高くなると予想されれば、投資家はドルを売る
  →ドルを持っていても価値が下がるから→円高になる

つまり、インフレが実際に起きたかどうかではなく、投資家が「インフレになりそうだ」と思って行動した時点でレートは変動する。このメカニズムを認識しよう。

為替レートは何が動かすのか?

◆円ドルのレートは、日米の予想インフレ率の差に連動する。
 ・動かすのは中央銀行の金融政策。将来の予測がその中に反映されるのでメッセージ性もある
  →その変動に投資家がひきずられレートが動く仕組み
 ・金融政策は大きく2つ
  →ゼロ金利政策は銀行間の貸し借りの金利を下げ、金の流れを活発化
  →量的緩和政策は、市中銀行の日銀当座預金を増やして活発化を促す

◆インフレ率が上がると判断されれば、銀行の動きは活発化。以下の動きが起きる。
 1…国債の価格が下がる/金利が相対的に低くなるので
 2…インフレ連動債は価格が上がる
 3…通過安が起こる/通貨が売られるので
 4…株価が上がる/企業の収益が伸び、投資が活発に
 5…銀行貸出が増える/企業が景気回復を見越して積極策に

円高の正体、そしてデフレの“真”の正体

◆デフレは「悪」である。また、円高とリンクしている。
 ・通貨総量が少なすぎると、相対的に物やサービスの価値が低下。これがデフレ
 ・デフレでは賃金が下がり続ける。物価が安くなるから困らない、は嘘
 ・名目経済成長率は横ばいか減っている。企業は利益捻出のため賃金カット   
  →改善しなければリストラ。いわゆるデフレスパイラル

◆デフレは生産年齢人口の減少のため、という説は誤り。
 ・現役世代が減っているグルジアやモルドバはインフレ傾向
 ・デフレが続くという刷り込み(先入観)が円高を引き起こす

◆円高の脱出策は「日銀がマネタリーベースの供給量を増やす」こと。
 ・先進国では日本だけデフレで経済成長していない
 ・デフレを脱却すれば、2~4%の成長は不可能ではない

◆マッカラム・ルールという式で計算すると、2%名目経済成長には追加で28.8兆円必要。
 ・同時に1ドルは95円程度になるだろう(アメリカの経済が激変しないと仮定して)
 ・4%成長のためには78.8兆円追加。1ドル=115円に
 ・現在の量的緩和が効かないのは、手段が無効だからではなく、規模が中途半端だから

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