町長選挙の書評・感想

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町長選挙 (文春文庫)

「オーナー」
日本一の発行部数を誇る「大日本新聞」の代表取締役であり、プロ野球・中央リーグの人気球団「東京グレート・パワーズ」のオーナーでもある田辺満雄。ここ最近、プロ野球界の1リーグ制を推し進めて、世間の反感を一身に受けている。何故みなわからないのだ、1リーグ制が最善の案だということに。
しかしここのところ、夜眠れない。原因はわかっている。暗闇が怖いのだ。あと、閉所も。しかし、天下の「ナベマン」が、暗闇だの閉所だのが怖いなどと知れたら…しかし病状は悪化するばかり。仕方なく、名病院と名高い伊良部総合病院に精神科があると聞きつけ、伊良部の元へと通うことになった。
いきなりの無意味な注射、愛想はないが胸のでかい看護婦、天下の「ナベマン」を前にまるで屈しない伊良部…ここは一体何なんだ?とにかく俺に薬を寄越せ!

「アンポンマン」
東大の学生時代に立ち上げた事業を急成長させ、今ではIT業界の寵児と言われるまでになった、IT関連企業ライブファストの代表取締役である安保貴明。1リーグ制移行のゴタゴタの際、球団買収に乗り出して一躍有名になり、今では誰もが知る名物経営者になった。ムダを嫌う徹底的な合理主義が行き過ぎて、年寄り連中には受けが悪い。
しかし最近おかしなことに、ひらがなが思い出せない。キーボードでどう打つかはわかるのだけど、ひらがなの形がまるで出てこない。本人としては、何が問題なわけ?と気楽なものだが、社長思いの秘書によって、伊良部の元へ連れて行かれることになった。
しかしこの医者、一体なんなんだ?とりあえず注射をしようとするし、話していることもよくわからない。ムダだ、無駄。一体俺はここで何をしているんだか…。

「カリスマ稼業」
44歳にして、その年齢ではありえない美貌を維持している、超トップ女優の白木カオル。外面では、私特別何もしてません、という自然体をアピールしているが、まさかそんなことがあるわけもない。小じわを見つけては落胆し、食事のカロリーを計算し、日々運動を欠かさない。そうやって、なんとか現状を維持しているのである。
しかし、最近どうも、太ることに対して過度に神経質になっているかもしれない。同期の女優と一緒のドラマで、自然体をアピールするために揚げ物をたくさん食べてしまい、太るかもしれないという恐怖心を抑えることができずに、なんと伊良部の診療所の一室を借りて運動をすることにした。白木の付き人と伊良部の看護婦がバンド仲間なのだ。
私、ちょっとおかしいかも。そう気付いて、なんとなく伊良部と話をすることになるのだけど、太ってみたら楽になれるよ…ってそれができたら苦労しないんだけど…。

「町長選挙」
伊良部が、父親の命で2ヶ月ということで送り込まれた千寿島。伊良部はここで、短期の遠隔地治療をすることになったわけだ。
島は今、町長選挙の真っ最中。と言っても、その規模は並のものではない。
小倉という現町長と、八木という前町長。この二つの勢力が、町長選挙の度にものすごい争いになるのである。なんと言っても、負けた側は問答無用で閑職に回され、次の町長選挙まで泥を飲むような生活が待っているからだ。そんな、生き馬の目を抜くような激しい町長選挙の真っ只中だった。
宮崎良平という、2年という期限でこの島に赴任した男は、住民票をこの島に移してしまったばっかりに、どちらの陣営につくのかを日々強要されている。公務員として、公然と買収が行われているのを見過ごすことはできないのだが、この島ではそんな意見は通用しないらしい。どっちつかずでいるうちに、どちらの陣営からも見方だと思われるという最悪の展開になり、困惑する良平。勢い、伊良部に相談するのだが、この男はなんなんだ?ただのバカなのか?
しかし、まさかその伊良部が、町長選挙のキーパーソンになろうとは…。

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