空中ブランコの書評・感想

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空中ブランコ (文春文庫)

「空中ブランコ」
サーカス団のエース団員山下は、ある時期を境に空中ブランコに失敗するようになった。それは、キャッチャーである相方が、内田という男に代わってからだ。山下は考える、きっと、内田が嫌がらせをしているんだ。なんてことだ…と。上司や妻に、精神科へ行くことを勧められ渋々行くことにしたが、そこで出会った伊良部が、何故かサーカス団で空中ブランコの練習をすることに…。人間不信の山下と、誰にでもすぐに取り入ることのできる伊良部の物語。

「ハリネズミ」
尖ったものを見るとじわっと汗が滲みでて、気分が悪くなる…そんな先端恐怖症になってしまった、やくざの若頭猪野。つまようじも箸もダメで、同棲している水商売の女にも呆れられている。周りにはなんとしても知られるわけにはいかないが、治さないわけにもいかないと、伊良部の元を訪れる。先端恐怖症なのに注射をされ、やくざの看板が効かない世界に戸惑う猪野。やがて、血判を送るという話になる。それはつまり、親指をナイフで切らなければいけないということ。一体どうすればいいのだろう…

譲れないものを持つことは大事だけれど、それだけが全てではないでしょう。

「義父のヅラ」
学部長の娘と結婚した池山。精神科医である彼は、最近ある衝動にかられるようになる。周囲を困らせたいという衝動で、並んだグラスをなぎ倒したり、非常ベルを鳴らす、といった誘惑といつも戦っている。何よりも一番困るのは、義父である学部長のヅラを、衆人の前で取ってしまいたい、という衝動だ。同業である伊良部の元を訪れると、破壊衝動を代償行為ではらせてやればいい、ということになって…

「ホットコーナー」
一塁への送球がまったく定まらなくなってしまった三塁手坂東。肩の故障ということにして調整をしているが、原因がまったくわからずに途方にくれている。友人には打ち明け、精神科へ行くことを勧められたが、伊良部はキャッチボールをしようというだけで、特に治療らしいことは何もしない。そのうち、キャッチボールも制球が定まらなくなっていき、坂東は焦っていく。アイドル並の人気を得つつある、坂東の代わりの三塁手である鈴木の存在が気になるところだけれども…

「女流作家」
締め切りに追われる、恋愛小説作家星山。彼女は、今書いている小説の設定を、過去にも書いているのではないか、という強迫観念に囚われている。そう思い込んだら、かつての著作に目を通さずにはいられない。嘔吐を繰り返すようになり伊良部の元を訪れたのだが、伊良部は作家デビューをしたい、とわけのわからないことをいい、星山に呆れられる。編集者や、同業の作家などとの関係や、彼女がかつて書いた、売れなかった大作の存在が、彼女にのしかかる…

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