「世界征服」は可能か?世界征服が「割りに合わない」理由、悪とは何かなど

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「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

「世界ってのはつまり、自分を中心とした価値観でしょ? そんなものは生まれたときからわたしの物よ。そんな世界を支配しろっていうんなら、私はとっくに世界を支配しているわ」(遠坂凛)

30分で読めるのにベラボウに面白かった!

正義と悪を相対化する

この本のテーマはコレに尽きる。

勝ったから正義、負けたから悪、という考え方は面白くない。
正しいから正義、間違っているから悪、という考え方は差別やいじめの温床になる。

そもそもこの2つの関係は正義が上で悪が下という固定的なものではない。
何が善で何が悪かを考えることなく形式面だけにこだわった勧善懲悪的な道徳などクソ食らえでございます。

この本の定義に従えば、イノベーションは悪。社会起業家は悪。NPO活動なども悪に分類されます。だけど、正義よりずっと良いことをします。
一方で、最近は正義を称する人間が非常に愚かで間違ったことばかり主張したり行動したりするのが多く見られます。

正義だから正しい、悪だから悪い、みたいというトートロジーから一歩進んで
真面目に正義って何だろう、悪って何だろう、
間違った正義はないのだろうか、優れた悪はないだろうか、と考えてみる。

言葉遊びじゃなくて、ちゃんと現実的に、理詰めで考えていく。
その思考過程がめちゃくちゃ面白かったです。

学校の道徳教育でいうような、
世の中の人に迷惑をかけちゃいけませんとか
人と違ったことをしてはいけませんみたいな
非常に狭く硬直した正義のせいで息苦しくなっている人は、
この本を読んでそういう考え方を笑い飛ばしてしまいましょう。

命題 「支配するとは何か」「階級社会とは何か」「悪とは何か」

これについて、過去のエンタメ作品や巷の俗説をチェックしながら、
現実的に、理詰めで突き詰めていく

世界征服が「割りに合わない」理由

悪による世界の支配は、正義よりもずっと目的達成が難しく、
より高度な経営が求められるということが示されます。

・理念や具体的な目的の設定
・人材確保
・資金の調達と設備投資
・作戦と武装
・部下の管理と粛清?
・世界征服その後

非常に大変な割に、中世ならともかく
たとえ世界の支配を実現できたとしてもうまみがないことも示されます。
支配を目的にするなら、
経済面なら正義の名のもとにまともに企業運営したほうがいい。
政治面ならプロパガンダを行った方がいい。ネットがプロパガンダや群衆操作を無効化すると言われてたけどそんなことは全然なかったしね!

実行する者にとって「悪の価値」はそんなところにはない、と指摘します。

悪とは何か? 悪の価値は何か なぜ人は悪を実行するのか

「悪とは人々の幸福を破壊する行為のこと」と明確に定義する。

そして「人の幸福感とは、その時代の価値観で決まります。つまりその時代の価値観=幸福感にダメージを与える行いや言論こそが悪なのです。では世界征服とは何か、それは人々から平和な生活を奪う行為です。平和というのは現在の社会秩序が保たれている状態を指します。つまり、悪による世界征服とは、人々の幸福と平和=現状の価値観や秩序の基準を破壊することなんですね」

これが悪であり、なぜ人が悪に惹かれ、悪と分かりながらそれを実行するのか。
それは「現状よりその人にとってもっと幸福を感じられる世界がある」からだと言う。現状の価値観では生きづらい、だから別の可能性を模索する。「人は幸福を求めて悪を行う」という大原則は抑えておく必要がある。
(ただし、その際に過去に学ばないで考えなしに現状を否定したりや現実逃避を目指したり、無気力に立ち止まるのは駄目な悪だと思う。)

悪をこう定義すると、当然次は現代の価値・秩序基準とは何か?を理解する必要がある。そして現代における悪とは、世界支配とはどのような形になるか、と理詰めで話が展開していく。

これからの世の中は悪が支配したり 悪が自由に生きる社会

さらに論を突き詰めていくと、現代の悪の組織の活動は現代の秩序である「自由主義経済と情報の自由化」に対抗するものとなる。この2つを否定したり、それに代替するものを提示して、今の秩序にヒビをいれる存在が悪の組織になる。
その活動形式はは、秘密結社ではなく、ボランティア形式であったり、エコロジー団体であったり、案外ハートウォーミングな合言葉で集まっているような団体ではないだろうか、となる。

「世界征服を目指す人とは、現状を否定する人のことです。人に優しく、環境に優しく、良識と教養ある世界を目指すことにより、悪の栄える世界を目指しましょう。今現在の幸福と平和にノーを言うこと。新しい幸福と平和を世界に宣言すること。これが新時代の、世界征服への合言葉なのです」

エンタメ作品をより楽しむために必須の一冊!

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