押入れのちよの書評・感想

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押入れのちよ (新潮文庫)

「お母さまのロシアのスープ」
わたしとソーニャは双子だ。中国の山奥で質素に暮らしている。ソビエトという国から逃げてきたらしい。
今日はマァさんが来る日だ。マァさんの姿は決して見てはいけないと言われている。そのためにわたしとソーニャは、家の外の物置小屋に行くように言われたのだ。

ある日うちに、絵本でしか見たことのない「じどうしゃ」がやってきた。お母さんの顔色が変わる。部屋に行って、目と耳を塞いでいなさい、と言われたけど…。

「コール」
美雪が実家に帰ってしまう。夫の雄二を亡くしたからだ。その墓参りに、今向かっているところだ。
美雪と雄二と僕は、大学時代からの友人だった。よくつるんでいろんなところに行っては遊んでいた。大事な仲間だった。
二人とも美雪を好きになったことはわかっていた。だから、どちらが先に美雪に想いを伝えるのか、ポーカーで決めることになったんだ。それで、僕は負けたんだけど…。

「押入れのちよ」
失業中の僕は、とにかく格安の物件を見つけなくてはいけなかった。家賃はなるべく低く、でも風呂付きであることは外せない。そういうと不動産屋は、あそこなら、と言って、一軒の物件を紹介したのだった。
そこは、傍目にも結構ぼろぼろの建物だが、広いしまあ悪くない。隣人も変な感じだけど、まあいい。交際中の彼女とは今うまく行っていないけど、これで仕事を見つければ大丈夫だろう。
…全然大丈夫じゃなかった。その風呂付で格安だったその部屋の押入れには、ちよという名の幽霊がいたのだった…。

「老猫」
近親がいないという理由で、先ごろ死んだ叔父の一軒家を手に入れることになった僕。妻に話すと、二つ返事で引越しを決めた。前々から気に入っていたらしい。
その家には、叔父が飼っていただろう猫が棲みついていた。太っていて、皮膚の爛れた醜い猫だ。しかし、娘がその猫に執着した。膿が出ている肌など気にもせずに可愛がっている。
おかしい、と思い始めたのは、叔父の遺したアルバムと、自称画家だった叔父が遺した絵を見た時だった。そこには、今我が家にいるのとまったく同じに見える猫が描かれていた。一応、会社の猫好きの後輩に聞いてみたが、猫の寿命は長くても20年ほどだという。どういうことだろうか…。

「殺意のレシピ」
今日こそは、と文彦は思っている。反りが合わずに喧嘩ばかりしている妻を、もう殺すしかない。
完全犯罪を目論んだ。一般には毒を持っているとは思われていない「アレ」を食べさせればいい。釣りから帰ってきた文彦を、三日前の喧嘩など忘れたかのように笑顔で迎えた妻の、やり直そうと考えているその気持ちに負けそうになるが、やるしかないんだ、と自らを奮い立たせる…。

「介護の鬼」
夫の父親の介護をする日々が続いている。苑子はそのことに苛立っている。日々、舅に虐待を加えることで憂さ晴らしをしている。熱いお粥を垂らしたり、氷水に浸したタオルで体を拭いたり、顔に落書きをしたり。ボケる前は、柔道で鍛えた体を自慢していたものだが、今となっては介護しにくいだけのその体にも苛立ちを覚える。
ふと目を離した隙に、寝たきりで動けないはずの舅の姿が見えない。なんてこと。早いところ見つけてお仕置きをしないと。そんな風に呑気に構えていたのだが…。

「予期せぬ訪問者」
そんなつもりはなかったのだ。と言っても通用しないだろう。
不倫相手を殺してしまった。殺すつもりはなかったのだが、当たり所が悪かったのだ。
死体を始末しなくてはいけない。ぎっくり腰になった体のことを思うと、死体はバラバラにしないといけないだろう。そうして死体を風呂場へと運んだその時。
呼び鈴が鳴った。やり過ごそうとするが、帰る気配がない。仕方なく出ると、清掃の無料サービスだという。追い返すことが出来ずに彼を家に上げるのだが、怪しいいい繕いを繰り返すはめになり…。

「木下闇」
十五年前、当時六歳だった妹の弥生が失踪した。当時八歳だった私は、妹が姿を消した、夏休みの度に訪れていた母の生家を訪ねてみることにした。
以前と変わらぬたたずまいで残る生家には、いとこが一人で住んでいた。特に交わすような会話もないまま、台風が近づいたその日は、泊めてもらうことにした。
敷地内に聳え立つ大木を中心に不審なことが続き、私は決めた。この木に登ってみよう。そうすれば、何かわかるのではないか…。

「しんちゃんの自転車」
夜十一時。子供にとっては真夜中であるその時間に、しんちゃんが自転車を漕いでやってきた。遊ぼう、ということらしい。しんちゃんらしい。行方不明になった神主さんがいるという噂の祠に行きたいようです。
しんちゃんの漕ぐ自転車の荷台にのって、真っ暗な道を進んでいきます。しんちゃんは相変わらず変なことばかり言うし、変な言葉を教えようとします。それでも、しんちゃんに会えて、私は嬉しいのです…。

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