世にも美しい数学入門の書評・感想

2130views黒夜行黒夜行

このエントリーをはてなブックマークに追加
世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)

本作は、作家小川洋子と数学者藤原正彦との対談を収録した作品です。小川洋子は、「博士の愛した数式」という、記憶が僅かしか持続しない数学者の話を書くのに、御茶ノ水大学の藤原正彦教授を訪ね、その経緯から本作が出来上がりました。
内容はもちろん数学に関することが主ですが、印象としては、「数学」という名前のグローブをして、「数学」以外のボールを投げてキャッチボールをしている、という感じです。根底に数学があり、最終的に数学の話に収まるけれども、でもその過程でいろんな話が出てくるという感じです。数学の本ということで敬遠する向きもあるかもしれないけども、「数学入門」と銘打ってあるように、まさに入門中の入門書であり、数学の世界ってこんなに美しいんだ、ということが感じられるような内容になっています。
気になる内容をさりげなく書いてみましょう。
例えば日本人の数学に対する能力について触れています。数学というのは、想像力と美的感覚を必要とするというのが藤原氏の意見で、日本人は昔から、俳句という短い語句で世界を表現する文化があったから、日本人は能力が高い、ということです。実際に、数学にノーベル賞があったら、日本人の受賞ラッシュというぐらい日本人の功績はあるようです。先ほどフェルマーの定理の話をしましたが、それを証明するのに果てしなく重要な役割を担った二つの理論があるのですが、それを共に日本人が発見しています。その内の一つである「谷山=志村予想」というのは、これが証明されればフェルマーの定理も自動的に証明される、というほどのものでした。しかも、凡人の僕にはわかりませんが、この予想があまりにも奇天烈で、かつあまりにも美しいのだそうです。谷山という数学者が初めに提唱した時は、その奇天烈さ故に完全に無視されたそうです。どれくらい美しいかの説明として藤原氏は、「富士山とエベレストの間に掛かっている虹を発見したようなもの」という感じで書いています。日本人というのは、特に数学という分野では優秀なようです。
数学の発見や浸透には、かなりお国柄が関係しているという話もありました。例えば、ヨーロッパではマイナスの数や無理数・虚数は大分最近まで受け入れられなかったそうです。現実的ではない、という理由なんでしょう。そこへ持ってきて、アジアはかなり寛容です。0という数字を発見したのはインドだというのは有名な話ですが、ヨーロッパでは絶対に見つけることは出来なかっただろう、とのことです。インドには、もともと無という概念があって、すんなりと0という概念が受け入れられたそうです。一方で、数学と物理を結びつけたのはヨーロッパです。神が世界を創ったのだから、すべてが結びついているという根幹があるからだそうです。一方でアジアは、八百万の神とも言う様に、神様だけでもなんでも受け入れてしまいます。数学では先端を行っても、それを物理と結びつけるという発想はアジア人には出来なかっただろう、ということです。面白いものです。
また、素数や円周率であるπについても面白いことがいろいろ書いてあります。どちらも、数学を語る上で欠かすことのできないもので、それでいて未だに謎が隠れている。特に素数は謎の宝庫です。
πについて面白いことが書いてあったので書きましょう。
「2xの間隔を開けて引いた何本かの平行線に、xの長さの針を投げたとき、針が平行線に触れる確率は1/πである」
これは、「ビュッフォンの針の問題」という有名な命題なようですが、そもそも上の条件で針を投げた時の確率が数学的に出せることも驚きだし、それが1/πというシンプルな形で表せることも驚きです。しかも、円とはまるで関係ないのにπが出てきたりして。
とにかくそんなわけで、数学は圧倒的に美しいわけです。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く