沈黙博物館の書評・感想

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沈黙博物館 (ちくま文庫)

本作の軸というか縦糸となるものは、言葉にしてしまえば簡単なものです。
ある一人の博物館技師が、ある老女の命を受けて、博物館作りに専念する。
これだけです。
しかし本作は、そこに様々な横糸が絡まりあいます。それにより、かなり奇妙な、そして複雑な感じになっています。
物語は、一人の博物館技師が、村にやってくるところから始まります。彼は過去にも様々な博物館を作ってきた実績があります。
依頼人の娘だという少女に案内されて、屋敷と称してもまだ足りないくらい広い邸宅に着くと、もう老女と言ってもいいぐらいの、少女の母親だという女性との面接になります。
偏屈な人だから初めは大変かもしれない。
そう少女に言われていた通り、かなり接しにくい人で、面接のあり方から、まず不合格だろうと踏んで帰り支度をしていた技師は、少女から合格の知らせを受ける。
しかし、そこからが大変だった。まず何にせよ、老女が何の博物館を作りたいのか一向に明かさないのである。雑用をこなす中で時間は過ぎ、ある日それが明かされる。
村で死んだ者の形見を集めた博物館。
老女は、11歳の時、初めて目の前で人が死ぬのを見た。その時咄嗟に、その人が身につけていたものを形見として盗み取った。以来老女は、村で人が死ぬとどんなに困難であっても形見を収集しつづけた。
その形見を収蔵した博物館を作る。
技師にとっても難題であったが、彼は仕事に取り掛かる。
村でののんびりした生活、少女とのとりとめのない日常、自ら作った暦を守り通す老女に振り回される日々、家政婦と庭師を含めて動き出す時間、村で50年ぶりに起きた殺人事件、沈黙の修行をする僧たち。そうしたもろもろ横糸と絡まりあいながらも、実に複雑に、それでいてストレートに物語は進行していく。

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