「世界征服」は可能か?の書評・感想

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「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

アニメとか特撮ヒーローの話ですが、よく世界征服という設定が出てきます。で彼らはその目標を達成しようといろいろと頑張るわけですけど、そこに正義の味方が現れて悪の組織をコテンパにやっつけるわけです。で悪の組織の目論みはなかかな達成されない、というのが王道のストーリーなわけですけど、やっぱりおかしいですよね。
本作では、「悪の組織が敵を一体ずつしか出してこないのがおかしい」とか「世界征服をするのに人民を殺してしまうのはよくない」みたいなことを書いているわけですけど、僕が変だなと思うのは、何で自分たちの世界征服という目標を邪魔する正義の味方を仲間に引き入れようとしないんだろうな、ということです。
だって考えてもみてください。正義の味方というのは、とにかく毎回邪魔してくるわけです。悪の組織からすれば、別に正義の味方と戦うために敵を送り込んでくるわけではなくて、基本的には世界征服をしたいから、それには正義のヒーローが邪魔だから敵を送り込んでくるわけです。それには膨大な手間とお金が掛かるし、効率が悪いです。
だったら、その豊富な資金力にモノを言わせて、正義の味方を買収すればいいんじゃないか、とか思いますね。まあいろんな事情でそれは出来ないのかもしれないけど、少なくとも戦う前に出来る限りの交渉をしてみるべきではないかと思います。まああのアニメとか描かれているのは、その交渉が破綻した後で、もう戦う以外に選択肢など残されていないのだ、という状態なのかもしれませんけどね。
本作では、実際に世界征服をした実例も挙げています。
例えば北朝鮮の金正日です。彼は、自分の私利私欲のために一国を支配しているわけです。
ただ、この金正日の成し遂げた世界征服を分析することで、世界征服における構造的な問題点というものが浮かび上がってくるわけです。
それは何かと言えば、結局金正日が欲しいものは北朝鮮内のはない、ということです。
金正日は北朝鮮を支配しているわけで、もちろん何でもし放題です。物量という点では圧倒的です。どんなものでもどんな量でも手に入るし自由です。
しかしそれでも金正日は満足出来ません。何故か。それは、北朝鮮内部からは面白い娯楽が生まれないからです。
金正日は北朝鮮を支配することで、人民に不自由な生活をさせて自分だけ豊かになろうとしています。しかしそうすると、経済というものがうまく回っていきません。経済が上手くまわっていないところに面白い娯楽が生まれるわけがないのです。娯楽というのは、自由主義の原理の元で切磋琢磨が繰り返されるからこそ面白いものが生まれるのです。
だから金正日は大好きな映画を外国から輸入しなくてはいけないのです。一国を支配しているのに、娯楽は他国から輸入しなくてはいけない。つまり、暴力的に支配するだけでは世界征服のうまみはない、ということなのです。
では、世界征服を首尾よく成し遂げたとして、これからも自分は豊かで楽しく生きていきたいと思ったらどうするべきかと言えば、それは人民を豊かにしていくしかないわけです。ということは支配者である自分がしなくてはいけないことは何かといえば、世界を平和に保ち、経済を順調に回していくということになります。しかしそうなると、世界中のありとあらゆる問題の解決が自分に持ち込まれることになります。それを解決しないと世界の平和が訪れず、世界が平和でなくなれば自分も豊かに暮らして行けないからです。そうすると、折角支配者になったのに世界中の紛争を解決するだけの人になってしまうわけで、これはただめんどくさいだけです。
そこから著者が何を考えるかと言えば、世界征服にはうまみがあるのか、ということです。

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