鍵のかかった部屋の書評・感想

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鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

本作は、現代アメリカ文学の作家としてかなり高い名声を獲得しているポール・オースターの、<ニューヨーク三部作>と言われる作品の第三部です。三部作と言ってもそれぞれの作品は完全に独立していて関連がなく、どれから読んでも問題ありません(たぶん。解説で訳者がそう書いています)。
物語は、「僕」の元にかつての友人だった男の妻と名乗る女性から手紙が届くところから始まります。
ソフィー・ファンショーというその女性は、僕にとってはいささか困惑するような話を持ってきました。
ソフィーは、かつての僕の友人のファンショーの妻でした。過去形なのは、そのファンショーが失踪してしまったからです。ファンショーは、子どもを身篭ったソフィーを置き去りにして、どこかに姿を消してしまったのです。
ソフィーはファンショーの行方を尋ねたくて僕に連絡をしてきたわけではありません。失踪から半年経った今では、ソフィーは既にファンショーの生存を諦めている風でした。彼女は別の件で僕に話があったのでした。
それが、ファンショーの小説を読んではもらえないか、というものでした。
ファンショーはこれまで多くの作品を書き溜めてきたけど、出版したくないと頑なに拒んでいました。しかし失踪する直前、彼はようやく、原稿は近い内にどうにかする。もし何らかの事情でそれが出来なくなったら、「僕」に連絡をしてくれ。あいつが原稿をどうにかしてくれるはずだ。ファンショーはそうソフィーに語ったというのです。
僕は困惑したのだけれど、しかし結局はソフィーから原稿を預かりました。それはファンショーのためというよりもむしろソフィーと自分のためでした。
ファンショーの作品は陽の目を見ることになり、世の中に好意的に受け入れられることになりました。しかし、実際僕の物語が始まるのはそこからです。僕は、ある時から少しずつおかしくなっていってしまったのです…。

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