盛岡さわや書店奮戦記―出版人に聞く〈2〉の書評・感想

1678views黒夜行黒夜行

このエントリーをはてなブックマークに追加
盛岡さわや書店奮戦記―出版人に聞く〈2〉 (出版人に聞く 2)

本書は、今や伝説となったある一人の書店員(現在は退職されている)へのインタビュー形式の作品です。
その伝説の書店員というのが、伊藤清彦さんです。僕も正直、しばらくは知らなかったんですけど、ツイッターで盛岡のさわや書店さんと関わりが出来て、それから伊藤さんのことを知るようになりました。
伊藤氏は20代半ばまで本を買っては読みまくるという生活を続けた後、さすがにちゃんと働かないとマズイということで、山下書店というところでアルバイトを始めます。山下書店というのは、ファッションビルの5Fにあった、50坪ほどの店だそうです。しばらくして文庫の担当になった伊藤氏は、そこでとんでもない結果を次々と生み出すことになります。
手描きPOPを独自に考え出し(当時もう既に手描きPOPという発想はあったかもしれないけど、伊藤氏はそれを知らず、自分で考えたと思う、と言っています)、新刊や話題作ではない作品を大きく展開することで、4桁の売上を達成する作品を次々と生み出していきます。「Dr.ヘリオットのおかしな体験」という本は5年掛けて5桁売ったそうです。凄すぎます。
当時の書店というのは出版社や取次主導という側面が大きかったようで角川文庫と新潮文庫が棚のほとんどを占め、あとは申し訳程度に他の文庫がある、というような感じだったようです。伊藤氏はその棚構成を変え、また角川文庫のような放っておいても売れるようなものは奥にやり、手を掛けないと売れないような作品を全面に押し出すことで、信じられないような売上をたたき出すことになります。
その後同じく山下書店の20坪ほどの店の店長となり、そこでも驚くべき成果を出します。20坪の店に、「別冊マーガレット」という雑誌が300冊も配本されるようになるとか、ちょっと異常です。また、実績をどんどん積み上げていったために出版社とも繋がりが出来、文庫の新刊を初回で1000冊確保するとか(何度も書きますが、20坪の店に初回で1000冊というのは異常な冊数です)いう暴挙も出来るようになりました。
その後家の都合で地元岩手に戻らなくてはならなくなった伊藤氏は、山下書店の紹介で、地元のさわや書店に入社することになります。当時さわや書店は、全国ではもちろん、岩手県内でも無名という書店でした。
地方書店というのは当時東京以上に壊滅的だったようで、古参の女性スタッフが伊藤氏の仕事に嫌がらせをしてくるなどしょっちゅうで、こうすれば売れるのに、ということをやらせてもらえないという状況が続きます。一度は社長に、ここではやれない、と辞める意志を見せますが、なんとか踏ん張って自分なりの店作りをし、『岩手に伊藤清彦あり』と言われるまでの書店員になったのです。
本との関わりからさわや書店のスタイルを築きあげるまでを語った作品です。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く