娼年の書評・感想

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娼年 (集英社文庫)

本作の主人公リョウ。20歳の大学生だが、大学にはほとんど通わず、バーテンのアルバイトをしている。女に不自由したことはないが、積極的にセックスする気になれず、もてないわけではないが、付き合っている女性もいない。そんな、空っぽの冷蔵庫のような、ひんやりとして空虚な20歳という年。バーで出会った一人の女性との邂逅が、彼を異世界へと誘うことになる。
友人でありホストでもあるシンヤが、初デートだと言って連れて来た女性。40を超えながらも魅力溢れる女性。御堂静香と名乗った。彼女が去り際に置いて行った名刺を無視したリョウは、しかし一週間後また彼女と会うことになる。
「自分の退屈なセックスの価値を知りたくない?」
そう言われ、よくわからないままに静香についていく。彼女の自宅に案内され、彼女とセックスするものだとばかり思っていたリョウの目の前に、一人の少女がいた。20前にしか見えない。生まれつき耳の聞こえないという彼女と寝る。静香はそうリョウに告げた。リョウは、試験にかろうじで合格した。
娼夫として働く。成り行きだが決まってしまった未来に対して、リョウは積極的というわけでも、消極的というわけでもなく、無感動に飛び出していく。
そこで出会う数々の「欲望」の塊。
年上の女性が、自らの欠けた部分を曝け出し、リョウはその空白を理解しそこを埋めるべく最大の努力をする。彼はクラブでもどんどん人気を獲得していくようになる。
そんな中でリョウは、退屈だと言っていたセックスについての考えが変わっていくのを感じる。他人に触れることで自分の体温を知るように、彼もまた、女性に触れることで自分の変化を敏感に知るようになる。
特に理由があって飛び込んだ娼夫の世界ではないけど、いつしか彼は目的がはっきりとしてくる。
あらゆる欲望の形を見て、この世界の、いきつく果てを見てみたい。
リョウが娼夫として過ごす、ひと夏の物語。
リョウは決して溺れているわけではない。相手の欠けた部分を真摯に見つめ、理解し、それを伝え、そしてそこを埋める。彼にはそれが出来たし、他のどんなことよりも自分に合っていると彼は感じている。どんな女性でも、例えそれが老女でも、あるいは危険に感じられる性癖を持っていようとも、彼は拒絶することなく、受け入れていく。

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