死神の精度の書評・感想

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死神の精度 (文春文庫)

死神にはどういうわけか音楽(本作中ではミュージックと呼ばれるが)が好きらしく、CDショップに行けば大抵同僚に会う。不真面目な調査員は、ろくに仕事もせずに音楽ばかり聞き、一週間のぎりぎりまで粘り、結局「可」の判断を下すものが多いが、本作の主人公の死神は、一応真面目に仕事をしようとしているようだ。
毎回、調査対象に接近するのに最もよい年齢容貌が選ばれるので、容姿は一定しないが、名前は「千葉」で統一されている。とにかく人ではないので、時間の感覚も違えば、寝ず食べずでも問題ないし、もちろん死ぬこともない、という存在である。人ではなく、人については知識で知っているだけなので、受け答えが微妙にずれることも多い。また、本作の主人公が仕事をする時は(他の死神はそういうことはないらしい)、必ずと言っていいほど雨で、まだ晴れを見たことがない、と何度も言っている。また、素手で人に触ると、その相手を気絶させてしまう、という変な性質も持っているし、電波に乗った音声なら、多少離れていても聞き取ることができる、という能力もあったりする。
そんな変な死神の物語です。
短編集であり、6編収録されています。それぞれの内容を簡単に紹介します。

「死神の精度」
調査対象は、クレーム専門の電話受付嬢。電話では精一杯明るい声を出すのだが、普段はぼそぼそと暗い喋り方をする。話を聞いてみると、どうやら最近変なクレーマーがいるとのこと。やたらと彼女を指名し、変な要求をしてくるのだという。ただ、死神にそれをどうにかしてやろうという気はないのだが…。

「死神と藤田」
調査対象はやくざの藤田。込み入った事情があって、ある男(別のやくざのトップ)を探している。藤田は組の中でも浮いているのだが、阿久津という男は藤田に心酔している。藤田が、そのべつのやくざのトップを殺しにいく、という話にはるのだが…

「吹雪に死神」
調査対象は、雪山の別荘に旅行に来ていたある夫人。その別荘には、旅行に当選したという面々が集まっているのだが、調査対象の夫が死体で発見されてから、徐々におかしくなっていく。吹雪の中の山荘で起こる連続殺人(?)の謎とは…。

「恋愛で死神」
調査対象は、あるブティックで働く男。そのブティックで会った女性を好きになり、目の前のマンションに住んでいることを知って、毎朝偶然を装ってバス停で会うようにしているのだが、ある日突然「もう止めてください」と言われるのだが…。

「旅路を死神」
調査対象は、ついさっき殺人を犯してきた青年。その青年と車に乗って北へと向かう。旅の目的もわからずに車を走らせるが、青年は次第に自分の過去を話し始める。青年の目指す旅の目的とは…。

「死神対老女」
調査対象は、美容院を一人で切り盛りする老女。その老女はなんと、死神が人間ではないことを素早く察知、もう自分が死ぬんだなとわかっているのである。そんな老女は死神に、ある奇妙なお願いをした。この美容院に髪を切りに来る10代後半の若者を何人か勧誘してきてよ。しかも明後日限定で。何の意味があるかはわからないし、そこまでする義務もないのだが、死神は律儀に老女との約束を果たそうとする…。

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