トロイメライの書評・感想

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トロイメライ

本書は、池上永一の代表作の一つと言っていいだろう「テンペスト」と同じ世界観を有する作品です。「テンペスト」が首里城内のエリート達の話であったのに対し、本書は那覇の街の庶民を描いています。6編の短編が収録された連作短編集です。

「筑佐事の武太」
岡っ引きの役割を担う筑佐事になったばかりの武太。大きな事件の下手人を挙げて名を挙げようと、日々努力している。
そんな武太が向かったのは、子供の頃から世話になっている涅槃院という寺。大貫という長老がやっているこの寺は治外法権みたいなところで、犯罪者や犯罪者予備軍を匿っている。
武太が探しているのは、真如古という女。この女、一族の墓を売り飛ばしたとして手配されているのだ。大貫長老は、これまた治外法権のような宿「をなり宿」にいると告げるが…。

「黒マンサージ」
「をなり宿」には、部分美人と呼ばれる三姉妹がいた。長女は目元美人、次女は鼻筋美人、そして三女は口元美人。この三人は、料理を作らせれば天下一品という三姉妹でもある。
長女が新たな食材を求めて浜辺にやってくると、暴漢にあった。しかしそこを助けてくれたのが、黒マンサージと呼ばれる、那覇では知らぬ者のいない義賊だった。
一方武太は、加尼というジュリが殺された事件を追い始めていたが、これがまた厄介な事件で…。

「イベガマの祈り」
那覇の市民は、やはり貧困に喘いでいて、子供を売る親が絶えない。涅槃院にも、そうした子供が絶えずやってくる。
三組同時にやってきた子供は、体格だけが取り柄の虎寿、人並み以上の教養を備えた多根、抜群の器量に恵まれた美戸の三人だった。
三人とも親に棄てられ、さらに虎寿に至っては、最悪の奴隷制度と言われる糸満売りに出されることになり、不安と失望で一杯だった。
そんな中、虎寿が他の二人をそそのかし、逃亡を図ることに…。

「盛島開鐘の行方」
武太には、筑佐事になるきっかけとなった、ある強烈な思い出がある。それが、三線の名器と呼ばれる盛島開鐘の紛失にまつわる物語だ。
武太は三線を弾くのが趣味で、子供の頃に作ってもらった手作りの粗末な三線を操り、見事な音色を奏でるほどの腕前だった。
まさかその腕前が仇となり、あんなことになるとは…。

「ナンジャジーファー」
那覇には、ジュリと呼ばれる娼妓がいる。高級娼妓になると士族の女子並の教養を持つため、一定の敬意を払われる存在だ。
そんなジュリの中でも、那覇で最も有名なのが、魔加那だ。銀銭一千貫文という途方も無い値段がついたと噂されるジュリだが、その正体はよく分かっていない。
魔加那に会いたいと願う男どもに、三線を弾いていた武太が耳寄りな情報をもたらす。魔加那は中身汁が大好物だそうだから、その匂いに誘われてくるかも、と。さっそく「をなり宿」の三姉妹に作ってもらうことに。
一方魔加那は、その類まれなる美貌と男を手玉に取る術で男を翻弄していくのだが…。

「唄の浜」
武太が三線を弾く日は事件がなかった穏やかな一日だった、と言われるようになったが、武太としては筑佐事として評価されたい。何でもいいから相談事はないのかよ、と言うと、ある中年の女が、カンジャースーヤーのサチが最近体調を崩している、という話をする。
サチには武太も昔お世話になった。同じくお世話になった「をなり宿」の三姉妹も連れて見舞いに行く…。

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  • 池上永一

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