シャングリ・ラ 上の書評・感想

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シャングリ・ラ 上 (角川文庫)

破壊と再生の物語である。
舞台は近未来。地球温暖化が無視できないレベルに達したために、京都議定書で提案された二酸化炭素削減ということを、ありとあらゆるベースに据えた世界で物語は展開する。
それは経済すらも飲み込む。
資本主義に代わる新たな経済システムが生み出される。炭素経済と呼ばれるその経済は、二酸化炭素削減を目標に作られた新たな経済だ。各国の排出する二酸化炭素と吸収する二酸化炭素を、宇宙空間の監視衛星が観測し、それに応じて炭素指数というものが設定される。炭素指数が1だと、排出する二酸化炭素と吸収する二酸化炭素が同じということだ。化石燃料によって工業製品を作る国は炭素指数が高く、森林の多い国は炭素指数は低くなる。
炭素指数は関税のようなもので、炭素税という税金として加算される。自国の炭素指数が上がると、自国の製品に掛かる炭素税が上がってしまう、というわけである。
さらにその経済には、経済炭素という概念が導入される。これは、二酸化炭素削減目標に対する利子のようなもので、二酸化炭素削減が遅れれば遅れるほどこの経済炭素というものは増えていく。経済の中でこの経済炭素は、株のような扱われ方をし、経済炭素をうまく操ることで利益を得るようなシステムが構築されていく。
日本という国は、炭素経済を導入した直後、第二次関東大震災に見舞われる。焼け野原となった日本が排出する二酸化炭素は膨大で、国の炭素指数も上がる一方だった。そんな日本政府が下した決断は、その後の日本を大きく変えるものだった。
それは、東京を一面森に変え、吸収する二酸化炭素を飛躍的に増大させる、というもの。遺伝子組み替えをした植物は、急速な成長をくり返し、建物ごと飲み込む勢いで東京をどんどんと覆い尽くしていった。
そしてその森の中で異様を誇るのが、巨大建造物「アトラス」である。東京という都市機能をすべて集約するその建造物は、高さは4000mを超え、一層だけでいくつもの街を内包することのできるほどの規模である。未だ建設中のアトラスには、特権階級の人々しか住むことができない。

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