渋谷の神様の書評・感想

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渋谷の神様 (新潮文庫)

ティッシュペーパーボーイは渋谷のスクランブル交差点付近でいつも目撃される。赤いキャップに白いツナギというかなり特徴的な格好をしています。神出鬼没で、フラリと現れてはサラリと消えていく、そんな存在です。

「グッドラック」
高雄とはもう別れよう。翔子はそう決めた。何があったというわけではないが、むしろ何もなさすぎたからというのが正解かもしれない。これから彼に別れを告げるのだ。場所も自分で指定した。言うことも決まってる。
なのに、待ち合わせの時間に大分遅れちゃってる。どうしよう。連絡しといた方がいいかな。あと少しで着くんだけど…。
そんな時、後ろから突然掴みかかられた。えっ、何!?振り向くとそこには、赤いキャップに白いツナギのティッシュペーパーボーイがいた。何やら怒っているらしい。
「ぼくがティッシュを渡そうとしたのに、あなたはそれを振り払った」
なんて言われても困るのだけど、どうもそのティッシュペーパーボーイは、プロとしての沽券を踏みにじられてご不満らしい。もう一度歩いて来てよと言われて歩くのだけど、もっと自然に、何でこっち見るの、ほら先に手を出さない、と何度も文句を言われやり直し。
こんなことしてる場合じゃないんだけどなぁ…。

「ビーツって何?」
気がつくと公園にいた。目の前には両親と子供という親子連れがいて、三人が三人とも赤いキャップに白いツナギを着ている。そこで周平は、妻の麻子と自分の人生について考えている。
どこから狂ってしまったのだろう。
妻の麻子はもともと、周平が勤めていた証券会社の後輩だった。素直で可憐、仕事は丁寧でミスはないという大人しい女性だった。
その内周平は社内の試験をパスし、MBA取得のためにアメリカ留学をすることになった。その決定と同時に麻子にプロポーズした。そしてアメリカまで一緒に来て欲しい、と。麻子は、英語が出来ないけどと不安がったが、最後には付いてきてくれた。
アメリカに行っても、麻子はそれまでと変わりはなかった。英語が出来ないからと言って一人では外出せず、周平の影でいろいろと支えてくれる存在だった。
しかし、その内勉強が忙しくなり、どうしてもイライラしてしまうようになった。そんな時だ。二人で買い物に行った時。麻子に、
「ねぇ、Beetsって何?」
と聞かれたのは。そこで周平はこう言ってしまった。
「なんでもかんでもいちいち聞くな。せっかくアメリカにいるんだ。少しは英語を勉強したらどうなんだ」
やっぱりあのひと言がすべてを変えてしまったのだろうなぁ…。

「レオン」
尾崎はラブホテルで女子中学生の悩みを聞いてあげている。何でそんな事態になったのか…。
会社の同僚が、「ちょっといい思い」をさせてくれるという話を持ちかけてきたのだ。出会い系で女子高生と知り合ったのだけど、どうしても出張で都合がつかない。だから今回は替わりに行ってくれ、とまあそういうことである。
レオンと名乗った少女は実際には女子中学生で、もちろんセックスなんて出来る対象じゃない。話を聞いてみると、自分がどうにも蔑ろにされているようで、誰かに相手をされたいからと出会い系をやったのだとか。
それから尾崎は、レオンと度々会うようになった。レオンの悩みを聞いてあげるというのが一応の建前だが、なんだか一緒にいると若返ったような感じもしてくる。いつしか、自分が抱えている悩みまで吐き出していたのだけど…。

「恋が花盛り」
智樹のことが好きだ。好きで好きで仕方ない。こんなにも智樹のことを考えているのに…。
未だにセックスをしていない。
手も繋いだ。キスもした。なのに智樹はいつだってそこから先には進もうとしない。どうして?自分の浮気がバレて離婚しちゃったけど、でも私ってそんなに淫乱かな?好きになるって、愛し合うって、そういうことじゃないの?
一方智樹は思い悩んでいる。いつだって女性を傷つけていることは分かっている。七恵が恨めしげに見ていることだってちゃんと分かっている。でもダメなんだ。昔受けた傷をどうしても乗り越えられないんだ…。

「ボーイを探せ!」
地味だったはずの自分がスカウトされてタレントになった。そうして、特にこれと言った特徴もないままこれまでズルズルとここまで来てしまった。人の顔を覚えることだけが得意で、だから一度会った人でもちゃんと名前を呼んで挨拶できる。たぶんそれだけの理由で私はこの業界に残れているんじゃないかな。もうそろそろ芸能界は辞めて次のことを考えた方がいい。そうやっていつも悩んでいる。
一方でテレビの方では今、渋谷に現れる赤いキャップに白いツナギのティッシュペーパーボーイに注目が集まっている。最近そのティッシュペーパーボーイを見かけないなぁなんて話もある。よし!なら彼を探す企画を立てよう!話は順調に進み、生放送でやることが決まったのだけど…。

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