「無限」に魅入られた天才数学者たちの書評・感想

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「無限」に魅入られた天才数学者たち

本作は、「無限」というものがいかにして数として認められるようになっていったのか、その歴史について描かれている本です。無限に関しては、カントールという数学者が独創的な仕事を成すわけですが、それまでは無限というものについてはほとんど深く考えられることはありませんでした。
古代から、無限という概念については知られていました。しかしそれは、現在では「可能無限」と呼ばれる概念でした。「可能無限」というのは、『ある正方形を無限の小さな正方形に分割する』という風に使うときの無限であり、うまく説明できないけど、イメージ的にはある一定の上限があるような、そんな限られた無限なわけです。
カントールが現れるまで、数学者は皆この可能無限のレベルに留まっていました。そもそも無限について考えると何らかのパラドックスが生まれてしまうわけで、無限についてはあまり深く考えないようにしていたようです。
しかし、カントールの仕事により、無限に関する考察が、数学の根幹を成すほど重要なものであるという風に認識されるようになりました。カントールが生涯を掛けて証明しようと努力し(そのために精神を病んでしまった)、ゲーデルがその証明は現在ある数学の枠組みの中では証明できない、ということを証明した『連続体仮説』は、ヒルベルトという有名な数学者がとある学会で発表した最優先でとかれるべき23の問題の1番目の問題として取り上げられるほどでした。
カントールはまあいろんなことを考えたわけですが、それらはどうも、僕らのイメージからするりと抜けてしまうような、漠然としたものばかりです。例えば冒頭の話に書いた「無限マンション」(これはヒルベルトが好んで話していたという無限ホテルをパクったものですが)の話がいい例ですね。実際の無限ホテルの話はこうです。無限ホテルは現在満員ですが、そこに無限人の新たな宿泊客がやってきた。ホテルは満員なのだから当然入れるはずはないのだけど、しかし支配人は一計を案じます。現在無限ホテルに宿泊している人を、以下のルールで別の部屋に移すわけです。即ち、部屋番号1の人を2へ、部屋番号2の人を4へ、部屋番号3の人を6へ移します。すると新たな無限人の宿泊客を、奇数の部屋番号の部屋へと見事入れることが出来るわけです。
これは一体何の話かといえば、偶数・奇数ともに加算無限である、ということです。素数も有理数も加算無限です。加算無限というのは、整数と一対一の対応をつけることが出来る、つまり整数と同じ数だけ存在する、という意味です。整数と偶数が同じ数、というのは僕らの想像を越えた話ですが(普通に考えれば、整数は偶数の二倍の数なくてはおかしいですよね)、しかしこれはカントールが正しいと示したわけなんです。

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