中小金融について、定量分析した結果

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検証 中小企業金融―「根拠なき通説」の実証分析

はじめに

イメージで語れてきた中小金融について、定量分析した結果をまとめた本。

仮説:中小企業における淘汰は正常か?

結果:淘汰は正常である

・質の悪い企業が市場から選別され、デフォルトという形で退出している
・金融機関も、質の低いデフォルト企業を質の高い存続企業から区別した上で、高い金利を求めている

仮説:中小企業向け融資は適切に金利設定されているか?

結果:合理的な金利設定が行われている

・金利平準化説による説明が整合的である
・金利平準化説とは、金融機関が将来の企業の信用リスクも踏まえたうえで、長期的な視点に立って現時点での金利を設定している、というものである

仮説:貸しはがしの影響は深刻だったのか?

結果:金融機関は貸し渋りや貸しはがしを行っていた

・追い貸しを行っていたのは大企業に向けてであり、中小企業には行われていなかった
・設備投資や雇用といった長期的な視野に立って決定される企業行動については、メインバンクからの財務判断、取引先紹介などのサービスも大きな影響を与えている

仮説:リレーションシップバンキングは中小企業金融の万能薬か?

結果:メリットが全くないわけではないが、万能薬ではない

・リレーションシップバンキングが有効なのは、ハードな情報が得られない零細中小企業に対し、あまり競争にさらされていないような信用金庫が貸し出す場合である

仮説:担保や保証人に依存した貸出はやめるべきか?

結果:やめるべきではない

・担保や保証の利用率はリスクの高い企業ほど高いことから、担保や保証が借り手のモラルハザード抑制に寄与している
・メインバンクに対して頻繁に資料を提出している企業ほど、借入に際して担保や保証を利用している
・メインバンクとのリレーションシップを強固に築いている企業ほど、担保や保証の利用率が高い

仮説:政府による特別信用保証には効果があったのか?

結果:貸し渋りを緩和する効果がある

・資金制約が緩和して利益率の高いプロジェクトを実施できる効果が、借り手にモラルハザードが発生しパフォーマンスを悪化させる効果を上回る場合がある

中小企業金融におきている変化

①政府部門による中小企業金融への関与度合いの低下
②民間金融機関による中小企業向け貸し出しが、関係依存的な色彩をさらに弱め、トランザクション的な傾向を強めている

望ましい方向性

①関係依存型金融の選択と集中を進める
破綻する可能性が低くて貸出先としては安全だが利ざやが低い企業に貸すよりも、パフォーマンスが高いにも関わらず事業承継がうまくいかないといった企業に対して、事業承継のための手立てを講じ、存続させたうえで貸出を行う

②合理的な金利設定を
担保や信用保証付融資のほうが金利が高くなっているケースなど、企業の信用リスクを反映していない金利設定を改める

感想

やっぱりなぁという結果もあり、意外だと思う結果もあり。
こういう充実した研究成果をまとめた本は貴重ですね。

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