「デジタル時代の著作権」 著作権と現状の問題、これからの著作権制度

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デジタル時代の著作権 (ちくま新書)

概要

デジタル時代における現行著作権法の限界を考察し、新たな著作権のあり方を探る。
著者は弁護士で、NPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン常務理事。

著作権と現状の問題

◆著作権法の意義は、創作活動の活性化。
・複製の方が楽して儲かるならば、オリジナルを作り出す意欲が失われる

◆著作権法で守られる条件は 1…表現されている 2…創作性がある こと。
・事実やアイデアは保護しない。アイデアを論文などで表現したら保護の対象に
・創作者には著作財産権(複製の禁止など)と著作者人格権が与えられる
・承諾の手間で社会が疲弊しないよう、例外規定がある(私的利用はOK、など)
・音楽の場合、歌手やレコード会社には著作隣接権が認められる

◆活版印刷による大量複製技術が著作権の概念を生んだ。
・1886年のベルヌ条約で、海外の著作物を互いに保護しあう仕組みができる

◆デジタル技術の発達で、著作権法が現状に対応できなくなってきた。
(1)従来にはない複製の概念がでてきた
  → 厳密にいえば、CDの再生も一時的なデータの(再生機への)複製になる
  → 文化庁は「情報処理を円滑に進める範囲で」合法との例外規定を追加
  → では、オフライン時にPCに残ったキャッシュを視聴するのは違法?
(2)複数の人が関与するコンテンツが増え、権利処理のコストが増大
  → コストを負担できる一部の人だけが、表現活動を独占してしまう
(3)文章とそれ以外の表現手段での、事情の違いが顕在化
(4)ネットなどで、一般人が日常生活の中でも著作権に関わるようになる

しかし、ベルヌ条約は加盟国の全員一致でないと改正できないため、対応が困難。

◆「間接侵害」は重要。直接侵害しなくても法に触れたとみなされる。
・ナップスター判決/音楽ファイル交換のサーバー提供は違法
・グロックスター判決/ファイル交換ソフトをサイトに置くだけでも、使われれば違法に
・ウィニー事件/違法にも合法にも使えるソフトについて、開発者に責任はあるか?
・ロクラク事件/カラオケ法理の無制限拡張は不当と判断

著作権の強化

◆音楽の複製問題に危機感を持ったハリウッドが、著作権強化に動いた。
・国際条約WIPOを根拠に、自分達に有利な著作権改正法を成立させる
・アメリカはFTAなどで、途上国に対し知的財産権保護の圧力をかけるケースも

◆DRM(著作権保護技術)は利用者のメリットを減殺する。
・日本はコンテンツの複製のみがNG。アメリカはDRMを破れば複製しなくとも違法に
・権利者がアクセスまでコントロールするのは問題。新技術の芽を摘むリスクもある

◆著作権保護期間の延長の動きがあるが、望ましくない。
・時間が経てばたつほど、権利者の確認など処理コストが増大するため

以上の諸事情により、権利者が利用者の自由を侵食しつつある。

◆科学における研究成果は、共有して互いに役立てる工夫が進む。
・科学論文や研究データも著作権保護の対象
・情報を囲い込むより研究者どうしで共有する方が、進歩につながる
・アメリカは、公的資金による研究データは共有化。一方日本は全く共有されていない
・利用をスムーズにするライセンスの標準化を進めるべき

クリエイティブ・コモンズの考え方

◆ベルヌ条約の例外規定を活用し「フェア・ユース」という概念が生まれた。
・無許可で利用した場合でも、目的や価値など公正な利用だと判断されれば罪にならない
・事後規制だから、著作物をとりあえずは利用できるメリットがある
・とはいえ、裁判官がどう判断するかは事前に分からない

◆そこで出てくるのが「クリエイティブ・コモンズ」という概念。
・作品を発表する段階で、権利者が無断利用の可否を意思表示するシステム
・具体的には「非営利」「改変禁止」などのアイコンを作品に表示
・表示内容の範囲で、自由に著作物を利用できる
・アイコンの種類で創作者のこだわりが分かる。日本の創作物は改変禁止の要求が多い

◆オープン・ライセンスは、コンテンツ流通促進のほかにも意義がある。
・役割分担で、よりよいコンテンツ作成が可能に。Wikipediaなど
・オープンな空間での多様性が進化を促す

これからの著作権制度

◆著作物の複製が必ずしも権利者を侵害するとは言えなくなってきた。
・複製され、幅広く世間に流通した方が宣伝になる場合も
・権利者の許諾がなければ原則禁止、という旧来の体系では無理がある
・その対応策の一つが、クリエイティブ・コモンズのようなライセンス制

◆著作権は保護しすぎると文化の進歩がない。未来の社会のあり方を見据えた法体系を。
・コンテンツは原則自由に使用可。権利を守りたい人のみが著作権登録する形が望ましい

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