すべて僕に任せてくださいの書評・概要

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すべて僕に任せてください―東工大モーレツ天才助教授の悲劇

本書の役割

 この本は2つの視点からタイムリーな作品と言える。1つは不況の悪役としてやり玉に挙げられている金融工学黎明期に活躍した研究者の物語として、もう1つはポスドク(博士号取得後に永続的な研究職に就けない人)問題の背景にある大学院重点化や研究者の実態を一般に知らせる広告として、である。

追いかけられるような研究生活

 本書は某国立大学の教授であった著者の視点で、自らが助手(現在は助教)として採用した一人の研究者、白川浩氏の半生を、工学分野における金融工学の発展とあわせて描いている。
 歴史に名を残すような研究をしたいという野望を思い描いても、そのような研究をするためには5年10年の単位で時間がいる。しかし、研究職を得るためには業績が必要で、業績とは論文数を意味するので、完璧に満足できるテーマではなくともとにかく形にして発表しなければならない。一方で研究をするための時間は、学生の指導や大学職員としての雑務により削られる。だが、これだって職があるだけまだましで、ポスドクは短い任期の研究職を転々としなければならない。

総括

 白川浩氏は、世界のリーダーとなれる器を持ちながら、他の研究者から雑務を押しつけられたり、政治的な人間関係に関わったりして、その才能と寿命を摩耗させていったらしい。後半になればなるほど、白川氏への同情と哀惜、自らの後悔に埋め尽くされていく。そういった点から見ると、これは理工系大学の研究者の実態を描くという以上に、白川氏を追悼する作品なのだろう。

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