都知事を軸に考える「都政」の課題と可能性

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都知事―権力と都政 (中公新書)

概要

著者は中央大学教授で行政学・地方自治が専門。地方行政や道州制に関する著書多数。
都知事の活動を軸に、都政の課題や可能性を考察する。

都知事とは

◆内閣総理大臣を超える権力を持つといわれるが、あながち間違いではない。
 ・都知事は1000万有権者から直接選ばれ、12兆円という財政を操る
 ・東京という街が持つ影響力・発信力も大きい

◆1947年に制定後、6人の知事が生まれた。
 ・安井誠一郎(47~59)/終戦直後帝都復興をめざす。腐敗の温床を生み出した面も
 ・東龍太郎(59~67)/東京五輪開催に尽力。医学部出身で、行政実務は不慣れ
 ・美濃部亮吉(67~79)/革新政党から当選。物価など庶民的な問題に取り組む
 ・鈴木俊一(79~95)/財政再建に取り組む。臨界副都心開発や都庁移転も
 ・青島幸男(95~99)/世界都市博中止を決断。バブル崩壊後の財政破綻を止められず
 ・石原慎太郎(99~)/小泉政権とともに、強いリーダーシップで東京再生をめざす

都議会と都庁官僚

◆都議会は事業機関と化している。立法府を自覚し、政策論争の活発化を望む。
 ・機関委任事務制度の撤廃で、議会に対する知事の優位性はなくなった
 ・にもかかわらず議員立法(法案提出)は依然少ない。二元代表制の意味がない

◆都庁官僚は2010年現在16万5000人と膨大。組織の硬直化という課題を常に抱える。
 ・国と違い、キャリア・ノンキャリアの区別がなく、管理職試験が存在
 ・組織は知事局、公営企業(水道など)、行政委員会(教育など)に分かれる
 ・政策に忠実な官吏型ではなく、政治と行政を対等に考える調整型の官僚が望ましい

政策決定

◆おおよそ多くの政策提案は知事や議会が、行政は職員機構が行っている。
 ・政策決定の主なパターンは以下の通り。
  1…稟議制方式/事業局から知事へボトムアップで流れ、知事が決裁
  2…トップダウン方式/マニフェストなど。知事が関係各局を巻き込んで推進
  3…諮問委員会方式/知事がブレーン組織を作り政策形成を委ねる。人選次第で弊害も
  4…側近ブレーン式/トップダウンの変形。知事が側近たちと秘密裡に進める
 例えば、鈴木都知事は3を多用した。石原都知事の銀行税は4のパターン。

都の財政と大都市行政

◆地方に比べ一見裕福に見えるが、実際は危機的状況にある。いわば「大都市型の貧困」。
 ・実質的に都知事が予算編成権や執行権を引き受ける
 ・地方交付税不交付なのに加え、法人税比率が高く税収が景気に左右されるのが大きい
 ・昼間人口が多く、流入する他県民のためのサービスだけで年6000億円との試算も
 ・高齢化に伴う社会福祉など今後に向けての支出がネックに

◆東京など大都市の能力を生かす都市経営の手法を、国は真剣に考えるべき。
 ・市町村にあって区にはない権限は、固定資産税などの徴収や上下水道などの業務。
  これは完全自治ではない。区は戦後一貫して、自治権拡大の要求を行ってきた
 ・政令市の二重行政を改善する「東京市」の構想がある
 ・東京や大阪などの大都市は、府県(州)から独立させてはどうか

石原都政の評価と東京の課題

◆石原都政12年間の評価を一言で言うと「経済は進歩、生活福祉は停滞」。
 ・規制緩和による再開発の活発化は都心回帰を促した
 ・数年で4人に1人が高齢者に。福祉への対応やニュータウンの世代更新は不十分
 ・「ディーゼル車NO運動」など環境問題への取り組みは先駆的。全国のモデルに
 ・地下鉄などインフラや港湾、羽田空港の国際競争力強化を

◆東京の今後の課題を挙げる。
 1…巨大化/石原都知事は都心集中を進めるが、多心化による再生も検討しては
 2…都庁改革/組織の再編で、事業官庁から政策官庁への移行をめざせ
 3…道州制/大都市は独立させて、都市競争によるダイナミズムで国を牽引させたい

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