「草の根」の援助、リーダーシップのあるべき姿

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国をつくるという仕事

本書のポイント

 世銀の副総裁だった著者が在任中に出会った各国のリーダーやその国の人々との思い出をつづったもの。元々は雑誌連載だったらしいので、断片的に感じるかもしれない。
 事実を淡々と書いているのだろうけれど、これがかなり感動的な仕上がりになっていて、読んで良かったと思わせてくれる。世銀は悪評もあるけれど、きちんと仕事をしている人もいるということなのだろう。

本書の構成

 著者は元世界銀行の南アジア地域副総裁であり、在職中に出会った数々のリーダーたちとの思い出の断片が綴られている。元々連載されていたものなので、1編1編は比較的短い。インドのマンホハン・シン氏とパキスタンのパルヴェーズ・ムシャラフ氏に始まって、ブータンのジグメ・シンゲ・ワンチュク雷竜王四世に終わる。
 こう書くと、世界銀行副総裁という肩書きもあり、各国の元首級の人々しか登場しないように思われるかも知れない。しかし、本書の真骨頂はそこにはない。本当の主役は、世界銀行の株主たる各国の国民一人一人だし、そこから生まれいずる地域のリーダーたちである。

「草の根」の援助

 本書のキーワードは「草の根」だろう。著者は在任中、初訪問国では貧しい村に寄宿し、労働して、現場で何が求められているのかを肌で体感してきたという。世界銀行には、現地で求められているものを探らず中央が机上で考えたものを押し付ける、という様な批判もあったかと思う。著者はその事実を受け止め、援助を、いかに現地の人が求めるものに留めるか、に腐心していたようだ。その悩みも正直に書かれていて好感が持てる。
 援助を現地の人が求めるものに留めると書いたが、これはかなり重要なことの様だ。援助が行き過ぎれば自助努力の精神が薄れ、本当の発展のためにならない。不正もはびこる。だが、往々にして援助をする側は、援助をすることによる政治的効果を考慮して、必要とされない、しかしマスコミ的に目立つ援助に余分な力を注ぎ込んでしまうものらしい。援助とは誰のためのものなのか、ということは肝に銘じておくべきことだろう。

リーダーシップのあるべき姿

 貧困から抜け出すためのリーダーシップとは、誰かから与えられるものではなく、貧困グループ全体において貧困から抜け出すための意識の底上げがなされたときに、湧き上がるようにして生まれてくるものなのだと知った。何かを求めるのではなく、自分たちが何をするのか。皆がそう考えるようになって初めて、貧困から抜け出すことができる。
 しかし一方で、その様な希望の光が生まれ様もない、漆黒の闇が存在することも知った。それがスラムだ。自分が生まれ育った場所から抜け出すことが、貧困から抜け出す唯一の方法。そんな悲しい場所はこれ以上作りたくないと思う。

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