なぜ、フィンランドは豊かなのか? フィンランドの特徴とは

3667views折笠 隆折笠 隆

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フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453))

概要

著者はフィンランドに留学経験があり、フリーライターとしても活動。

教育や国際競争力の面で注目が集まるフィンランド。その文化や経済、暮らしなどを日本と比較しながら紹介する。

不思議でとても豊かな国

◆日本から九州を除いたほどの国土に、北海道より少ない約500万人が暮らす。70%は森林で湖は18万個以上という、森と湖の国。夏は平均気温20度くらいで湿度が低い。夏至には白夜になる。冬はマイナス20度にも。公用語はフィンランド語とスウェーデン語。

◆05年のWEF国際競争力ランキングで世界1位に。主要産業は森林業、金属・エンジニアリング、情報・通信技術だ。製紙会社としてスタートした携帯電話のノキアは、今や国民の誇り。

◆では、労働時間は多いのか? 実は、一般的な勤務時間は8:00~16:00で残業はほとんどない。夏休みは4週間以上。ただ失業率は高めで、08年で6.4%。

◆90年代初めに経済危機に見舞われ、93年には失業率が20%に。政府は銀行の改革再生やIT産業に特化した投資、人材育成のための教育制度改革などを行った。一方で、痛みを伴う徹底的な予算切り詰めを実行。わずか数年で不況から復活した。

学力一位のフィンランド方式

◆小学校は6年、中学校は3年。現場の決定権が大きく、教科書選びや教員採用は学校単位で行われる。クラスは平均25人ほど。外国語は小学3年から始まる。宗教という科目も。

◆中学・高校は制服がなく自由な雰囲気。部活動もなく、スポーツや趣味は地域単位の活動へ参加する。高校は単位制。入試はないが、卒業時に全国共通の試験がある。

◆04年の学習到達度調査で、フィンランドは調査国中トップに。しかも授業時間数は低学年で年間500時間台と、調査国中最低だ(日本は700時間台)。好成績の要因としては、

1…教師の質の高さ/教職課程がハイレベル。問題解決力を養うように促す意識がある
2…生徒間や学校間の学力差がない/適度な学級規模や特別授業(補講)などが効果的

また、語学力の高さには驚く。20・30代の人は基本的に英語が話せる。

◆大学は学年がなく、自分のペースで研究を進めることが可能。授業料は無料。それどころか、17歳以上の学生は一律で月約500ユーロの生活援助が受けられる。

◆社会人の学習意欲も高い。04年には成人の45%が職業訓練や教育を受けた。学習環境の素晴らしさは、人を重要な資産とみなす制度改革の表れだろう。

税金で支えられた手厚い社会

◆税率が高く、食品は17%でガソリンはなんと60%。だが国民は福祉の恩恵を受けるため、あまり不満を口にしない。公共医療機関は格安。ただし医師が不足気味。

◆子育て支援が厚い。生まれると育児用品セットが支給される。3歳までは月300ユーロの手当てが、さらに17歳まで養育手当てが支給される。仕事と子育ての両立がしやすいため、就学前の子供を持つ母親の実に80%がフルタイム勤務。

◆女性の経済的自立がしやすいためか、離婚は多い。そのぶん結婚前の同棲が当たり前になっている。また、二世帯同居という発想はほとんどない。親子が互いに依存しすぎず、それぞれの人生を尊重している。

◆初の女性大統領・ハロネンをはじめ、女性の政治参加も積極的。07年の選挙では国会議員の4割を占めた。

日本と似ている? フィンランド文化

◆個人的に思うフィンランド人のユニークな特徴を挙げる。

1…世界一不味いサルミアッキが大好物/甘しょっぱいお菓子。著者は「タイヤの味」にしか感じないが

2…名前がなく、外で昼寝する赤ちゃん/厚着させるとはいえ、マイナス10度の屋外で昼寝させる。外の方が空気が新鮮とか。名前は生後1~3か月の洗礼式で決まるため、それまではない

3…ノルディックウォーキングにフィンランド式野球/スポーツクラブ制度があり、国民はスポーツ好き。ノルディックウォーキングは健康にいいと人気だ。一般の野球は全く人気がなく、ペサパッロという野球に似た競技がある

4…誰よりもスウェーデン嫌い/スウェーデンに占領されていた歴史や、隣国へのライバル心か。ただ、似ているからこそ意識するもの。犬猿の仲というわけではない

5…家でも何でも自分で作る/リフォームくらいは自分で実行。家を造るのは父親の仕事、という文化がある

◆自然との共生抜きには語れない。森は生活の一部で、散策はもちろん夏は味覚狩り、冬はスキー。人口の6%が週末に狩猟を楽しむ。夏休みは富裕層でなくとも別荘暮らしで、サウナに入り存分にリラックス。

◆日本人とフィンランド人は沈黙を好む点で似ていると言われる。一方で異なる点も多い。例えば、精神論より結果重視の傾向があり「頑張る」という表現がない。目的を遠まわしに言っても伝わらない。上下関係ではなく対等なコミュニケーションを求めるところなど。

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