限界集落の問題。集落再生のプログラムは可能なのか

1629views折笠 隆折笠 隆

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限界集落の真実: 過疎の村は消えるか? (ちくま新書)

概要

著者は首都大学東京准教授で、地域社会学・環境社会学が専門。

消滅予言的イメージが先行しがちな限界集落論に対し疑義を呈示。単なる高齢化問題ではなく世代間の極端な住み分けが根本原因と指摘し、再生のきっかけを模索する。

つくられた限界集落問題

◆限界集落とは80年代末、大野晃氏によって提唱された概念。65歳以上の高齢者が半分を占め、共同活動の維持が困難な集落と定義される。

◆が、以降限界集落が高齢化で消滅した例は確認できない。そもそも限界集落が注目された07年は地域格差問題への関心と参院選があり、メディアに作られた感がある。少なくとも現実化した問題ではなく、将来のリスクと捉えるべきだろう。

全国の過疎地域を歩く

 鹿児島県南大隅町・旧佐多町/限界集落が半数以上
 新潟県上越市・旧大島村/集落の発展的解消はあった
 京都府綾部市/水源の里として、山間集落の新たな位置づけを
 島根県邑南町/過疎先進地。地区再編で対応
 秋田県藤里町/消えた集落は意図的な集団移転が多い
 高知県仁淀川町・大豊町/地形が急峻な地域。林業の衰退が大きい

一口に限界集落と言っても地域により課題が全く異なる。認識した上での対策が必要。

世代間の地域住み分け

◆過疎を世代の視点から考察する。

まず戦前生まれ世代が、生まれた場所で生活
→戦後生まれ世代が過剰になり、都市に排出される
→その下の世代は最初から都市で生まれる

このような住み分けを経て、主に戦前生まれ世代が堆積する地区が現在の過疎・高齢化問題になる。

◆注意したいのは、世代間の住み分けは家族戦略からみても合理的であり、不本意ながら無理やり行われた現象ではないこと。だから、高齢化地域もすぐには崩壊しない。次世代への継承がうまく進めば十分存続する。課題は、その継承がスムーズにいくかどうか。

◆つまり、限界集落問題は崩れゆく世代間住み分けのバランスをいかに平衡に保つかという問いだ。だから、単なる一地方の高齢者支援に矮小化してはいけない。日本社会のグランドデザインにかかわる課題なのだ。

◆限界集落は非効率だから消滅させよ、と言う主張がある。が、何をもって効率とするかは不明確だし、効率・非効率地区の線引きも矛盾が生じる。

集落発の取り組み

◆青森県鯵ヶ沢町深谷地区のケースを紹介。同町は1970年に過疎法の指定を受けた。2000年代には子供を生める世代が激減し、危機感が芽生える。集落はかつて炭の産地で、燃料供給地の役割を担っていた。

◆著者の研究室と役場、住民で対策に取り組む。岩手の対策先進地域への視察を経て、地元の魅力を再確認。地区の観光施設で、地元食材提供などを行うモニターツアーの実施に至った。

◆それ以降の具体的な活動はない。が、大事なのは表面上の成功ではなく、地元民のやる気・意志が変わるかどうか。実際、活動後は同地区で3組が結婚するなど動きがみられた。

◆伝えるべきもの(生活文化や哲学)が残っている集落は、高齢化が進んでも健全だ。また、限界集落の対策は、国ではなく集落自身を起点とすることが何より重要。

変動する社会、適応する家族

◆戦後、多産少死への移行やベビーブームという人口過剰の圧力が発生。村は肥大化しないよう、下の世代を都市など外部へ排出することで対応した。

◆排出した家族が近隣に住んだり、帰還を希望するケースも多い。一見高齢者ばかりの村でも、人々の還流の仕組みを作れば集落維持のきっかけになる。過疎問題は世代間の地域継承の問題なのだ。だから、高齢者対策だけでは不十分である。

集落再生のプログラム

◆下北半島では、インフラや産業の有無がそのまま人口の集積に関わっているのが分かる。もっとも産業があっても、原発のような外部から来るものは撤退など不安要素が残る。

◆過疎対策は国に依存せず、当事者の“暮らし”の中から生みだすのが望ましい。主体的に、あるべき社会や新しい生き方を考えていく。

◆「集落点検」という方法が面白い。まず、地図に集落の家や家族構成を書き出す。当然人数は少なくさみしい。が、その家族(近隣に住み、週末実家を訪れる子供など)も書き込むと、村は決して閉塞していないと気づく。あとは、帰還のために必要な要素を考えていけばいい。

◆加えて、近隣集落や都市との連携や関係再構築を行えば、地域外資源を有効に活用できる。また、メディアを巻き込むことで当事者の現状認識がさらに深まる可能性がある。

◆限界集落が提示する問題は地方にとどまらない。地域の主体性が失われたのはむしろ都市部。今こそ視座を転換し、周辺から中心(都市)を考察してみると課題が見えてくるのではないか。

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