論理学入門―推論のセンスとテクニックのためにの書評まとめ

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論理学入門―推論のセンスとテクニックのために (NHKブックス)

「論理が人間を自由にする」

 日本経済が、グローバル化するにつれ、従来の以心伝心によるコミュニケーションが通じなくなった。言葉と文化が違う国の相手を説得し、物を購入してもらったり、工場を動かしたりするには、何よりも「筋の通った話ができること」が重要である。つまり「論理」が必要となる。そういうわけでビジネスの世界では、「ロジカル・シンキング」、「クリティカル・シンキング」、あるいは「レトリックと論理」というタイトルの本がブームとなっている。
 

 科学的創造や新しい起業などにおいては、アイデアそのものは直感的に出てくる。しかし、それらを具体化するには「論理的思考」が欠かせない。しかし日本の大学では、きちんとした論理学は教えられていない。これまで論理学は「文学部の哲学の一部」と見なされていたため、教えることができる教官が少ないという。

「人は論理に従うことにより、初めて自由になれる」

と著者は言う。
それは

「自然法則に従うことで、人間は初めて自在に空を飛べる」

というのと同じ意味である。論理学の本というと、やたら難しい用語が出てきて、しかも悪文で書かれているものが多く、うんざりして途中で放り投げることが多い。本書は小説家による文であり、読みやすい。ついで、素材が現代的な話題や、科学の話からとられており、著者は実際に幅広く教養を持っていて、それが読者の興味を引き出してくれる。

「推論のセンスとテクニックのために」という副題のついた本書は、第一部が「記号論理学の基礎、ゲームの規則」で、論理学の基礎的な解説が行われている。

 第二部「人間原理の論理学、論理における<私>の位置」は、本書で最も読みごたえがある。これまでのコペルニクス的な「宇宙原理」(客観的な宇宙)に対して、「人間原理」という新しい宇宙観が説明されている。

「宇宙があって人間が生まれてきて、それが客観的な宇宙を認識しているのではなくて、人間を生み出すような条件をそなえた宇宙があるから、人間に宇宙が認識できるのだ」

という議論である。この原理により、初めて科学から目的論を排除できるのであって、人間原理に依拠しない科学は宗教と変わらない、と著者は言う。

 目的論とは「キリンの首が長いのは高い樹の葉っぱを食べるため」というように、ある現象(結果)の原因を動機言的)によって説明しようとする議論をいう。

 著者の議論は宇宙物理学、生物学、哲学、倫理学にわたっていて、ゾクゾクするような不思議な知的興奮を覚える。

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