知の挑戦の書評・感想まとめ

5265viewsreading_boxreading_box

このエントリーをはてなブックマークに追加
知の挑戦―科学的知性と文化的知性の統合

内容

「知の専門分化をやめなければいけない」
   

 ウィルソンは生き物好きの少年として育った。

最初にリンネの生物分類法に接し、すべての生物が系統的に分類できることを知った。

この時に、漠然と「知の統一」ということを考えたという。

ついで大学に入って「進化」というものを知った。

これで「時間軸という統一のための一つの視点」が与えられた。

 もう一つの視点は、「エピジェネティック・ルール(後生則)」という概念である。

遺伝子は表現型がとることのできる幅を規定するだけで、その実際は環境との相互作用により決定される。

 こうして、後生則により、遺伝子と文化が結びつく。
 

 ターレス、アリストテレス、トマス・アクィナス、フランシス・ベーコン、コント、それにアインシュタインといった、自然界の統一性を考えた偉大な学者の系列に彼も属するといえる。

 著者は1970年に「社会生物学」という大著を著し、「自然の一部としての人間も生物学の法則により拘束されており、それゆえアリやビーバーと同様に、その社会現象を生物学的手法により研究できる」と論じた。この思想は当時の左翼から「人種差別主義者」、「優生思想」、「ファシスト」と罵られ、学会場に押しかけたデモ隊によりコップの水をかけられるという騒ぎさえ起きた。普通の人ならそこで委縮するところだが、ウィルソンは逆に、反対者の思想的基盤を徹底的に研究した。

 この本では、社会科学と哲学・倫理学に見られる「環境決定論」や「文化相対主義」に対して、豊富な自然科学的データを引用しつつ、逐一批判がくわえられている。かつての政治的攻撃に対して、著者はまじめに学問的に報復している。

 ウィルソンは言う。

「統合の探求は、教育においては、くずれつつある教養科目(リベラル・アーツ)の体系を復活する道になる」

「(大学の)真の改革とは、自然科学と社会科学や人文科学との統合を、学問と教育の場で目指すことであろう」

21世紀に求められているのは、まさにそのような「知」なのである。

感想

 ウィルソンは、ハーバード大学の教授で、生物学に「社会生物学」という新しい分野を樹立した研究者です。その人が「知の統一」を唱える本を書きました。この本では数学、物理学から始まり、生物学、遺伝学、生理学、心理学、文化現象、社会科学、芸術と文学、倫理と宗教が、横断的にではなく階層的に論じられています。読者は連続的な小山をいくつも越えて、だんだんと高地へ登り、徐々に視界が開けつつ、最後に知の巨峰の頂上からのすばらしい景色を見ることになります。

知の挑戦―科学的知性と文化的知性の統合

知の挑戦―科学的知性と文化的知性の統合

  • エドワード・オズボーンウィルソン

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く