経済学の面白さがわかる本「世界経済の謎―経済学のおもしろさを学ぶ」

6249viewsreading_boxreading_box

このエントリーをはてなブックマークに追加
世界経済の謎―経済学のおもしろさを学ぶ

概要

◆「現代のグローバルな資本取引から発生した「危機」や「脆弱性」の問題」
⇒国際資本取引の重要性

第Ⅰ部 国際取引の5つの動機
・「危険」そのものの原因…「投機」
・「危険」を拡大する要因…「デリバティブ」
第Ⅱ部 経済組織における「ねずみ講」的な仕組み
・「信用」のみで成り立つ取引の典型

◆国際取引の5つの動機 
【1】異なった財の交換 
【2】異なった時点に行われる支出の交換
【3】リスクの分散 
【4】価格差からのもうけをねらった行動(裁定) 
【5】投機

第1章 貿易から生まれる利益

【1】異なった財の交換

貿易の利益:消費の自由の拡大
貿易をしない場合:自給自足

◆貿易の第1原理:貿易は生産と消費の分離を可能にすることにより、消費の自由を拡大する

◆貿易の第2原理
①1つの国が生産のために使える資源(人手)には限りがある
・1つの財の生産と、別の財の生産には、トレード・オフの関係がある
②何もかも全てを生産するのではなく、人手の有効な投入を考え、得意分野で生産するべき
・その結果、国内生産が不足する財は輸入すればよい
(補足)
 貿易の下で、国内生産が効率的に調整された状態では、国際市場と国内生産における機会費用が一致する
・機会費用:「一方」を増加させるために必要とされる「費用」を犠牲とされる「もう一方」の量で測ったもの

◆貿易の恩恵:新しい生産技術が海外から導入、生活水準の向上
市場を調整するメカニズムとしての価格
・整合性:世界全体では、いずれの財についても生産と消費は一致しなければならない

◆貿易の第3原理(比較優位の原理):各国は、他国に比べて機会費用が低い財を輸出すべき得意分野に生産資源を向け、その財を輸出し、不得意分野では輸入をすべき

第2章 異なった時点に行われる支出の交換

【2】異なった時点に行われる支出の交換

国際資本取引の規模の拡大
固定相場制→(73年以降)変動相場制
・実物の国際取引の5倍、世界GDPの10倍のスピードで成長…純粋に恩恵とはいえない
・潜在的な恩恵:国際資本取引の自由化を批判したバグワッティも、自由な財・サービスの国際取引と、資本の自由な国際取引の間には、「対応関係」があることを認めている。

◆貿易と国際貸借の対応関係
・異なった時点:現在と将来

◆国際貸借の第1原理
・国際貸借は、総支出と総所得との分離を可能にすることにより、総支出の自由を広げる
国際貸借が可能ならば、自国の総支出の選択が広がる

◆国際貸借の第2原理
・国際資本取引のもとで、投資が効率的に調整された状態では、国内投資の収益率(機会費用)と海外投資の収益率(機会費用)とが一致
・国内への投資と海外への投資の間に、投資の収益率についての差がないことが、効率的な生産の条件
・国際貸借による恩恵:国際貸借により、総支出と総所得の分離が可能→総支出と総所得の選択が拡がる→それを利用して総所得と総支出を適当な水準に調整→生活水準が高まる
・調整メカニズムとしての利子率…利子率が上昇すれば、借り入れコストが上昇、貸出は有利になる
・整合性:世界全体を通してみれば、かならず総所得と総支出とが一致しなければならない

その他の章

第4章 危険回避としての国際資本取引
【3】リスクの分散
◆国際的な「投資の分散」:国際取引を通じても危険を減らせる!
「異なった時点に行われる支出の交換」が唯一の動機ならば、2カ国間の資本取引は一方向となるはず。

第5章 保険業にとってのさまざまな危険
・契約の完全性:不確かで偏在した情報下で結ばれる保険契約が必然的に不完全にならざるを得ない
・契約の条件は「完全」か?⇒全ての契約が「完全な契約」とは限らない
・完全な契約:必ず契約者の利益、不完全な契約:一方が不利に

第6章 裁定-価格差からのもうけを狙った行動
【4】価格差からのもうけをねらった行動(裁定)
◆経済を効率化させるもの
・裁定:「危険のない確実なもうけ」をねらう行動 □投機:「予測に基づいた危険なもうけ」をねらう行動
◆裁定を行う意味
(1)裁定を通じて、価格体系の「ゆがみ」が解消:2つの地域の「価格差」の解消
(2)「裁定行動」を前提に様々な経済予想ができる

第7章 投機
【5】投機
(1)貿易の場合:取引の参加者すべてにメリット…プラス・サム・ゲーム
(2)投機の場合:どちらかが損をする…ゼロ・サム・ゲーム

感想

 文量は370頁余りで読みごたえがあります。プロローグの幕末、ロシアのプチャーチン提督との日露通商交渉から、現代の小子高齢化と年金問題まで、扱うテーマは幅広く、それに最も適した現実の事件やエピソードを選び出し,分析には経済学の論文(著者によると約70本)を使用しています。経済学の面白さが伝わってくる優れた本だと感じました。

このまとめと関連のあるカテゴリー

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く