グローバル恐慌のメカニズムの真相とは

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グローバル恐慌の真相 (集英社新書)

概要

「TPP亡国論」で知られる京都大准教授・中野剛志氏と、滋賀大准教授で気鋭の経済思想家・柴山桂太氏が、グローバル恐慌のメカニズムを考察。保護主義による内需主導・財政出動の必要性を訴える。

グローバル化の罠に落ちたアメリカと世界

◆「日本は遅れているから貿易を自由化せよ」という主張はおかしい。
 ・今の経済危機はそもそもグローバル化が原因。その処方箋がなぜグローバル化なのか

◆資本移動の自由化はバブルを招き、必ず崩壊する。
 ・経済危機の主要因は、アメリカが輸入超過のまま資本を流入させてきたこと
 ・しかもグローバル化の時代では、いったん崩壊すると影響は予想を越えて連鎖する

◆危機脱出には、世界的な経済収支の不均衡解消が必要。
 ・赤字のアメリカは輸出を増やすべき。だが、格差拡大などで製造業再生は困難
 ・従ってアメリカは、さらなる金融化でごまかすしかない
 ・日本に狙いを付け、資金を還流させる仕組みを維持して切り抜ける。その一環がTPP

◆新自由主義的な規制緩和は、経済成長を保証しない。
 ・高度成長期など規制だらけだったはず。規制は意味があって作られ、機能してきた
 ・ハイエクは、歴史や文化的ルールを維持しないと全体主義に行きつくと指摘

デフレで「未来」を手放す日本

◆資本主義で進むならば、投資意欲をそぐ “デフレ” だけは回避せよ。
 ・なぜなら、資本主義は未来の利益を当て込む“投資”によって成立するから
 ・ゆえに、民間に余裕がなければ政府の財政出動が必要
 ・だが、日本は(他国もだが)逆に緊縮財政を行なってしまう

◆投資は需要の一種。例えば設備投資は“将来のニーズ”に応えている。
 ・つまり財政出動で老朽化インフラの整備を促せば、需要拡大につながるはず
 ・デフレの本当の怖さは、未来への投資を避け、長期的視野が失われること

◆市場が不安定になると海外進出に活路を求めがち。だが効果は期待できない。
 ・国内の雇用が生まれないので消費が減退。デフレは解決しない
 ・自国の得意分野を手っ取り早く売り込もうとするため、それ以外の産業が没落。
  格差が開き、大部分の国民は幸せになれない
 ・追いつけ追い越せの成長期なら、海外市場に出て切磋琢磨する意義があった
 ・が、日本製品はすでに成熟し国内市場も高度化。日本は海外に出るメリットがない

日本は高度成長期からずっと、輸出のGDP比が10%前後。
日本が輸出立国というのは誤解。

◆輸出主導となれば、貿易に優位な都市部が巨大化し、地域格差が広がる。
 ・稼いだお金はさらに海外へ。地方へのトリクルダウンは期待できず
 ・企業も海外との競争で儲からない。得をするのは経済変動で利益を得る金融階級だけ

◆資本主義には安定が必要。いずれどの国も保護主義的な政策に行きつくだろう。
 ・カオスがダイナミズムやイノベーションを生むと言う主張は誤り
 ・なぜなら、将来が見えない状態では誰も投資などしない(=資本主義が動かない)

格差と分裂で破綻する中国とEU

◆いま注意すべきは、国家間対立ではなく国内の分裂。
 ・EU危機で見えてきたのは、国境解消の理想にこだわるのはエリートだけということ。
  民衆はアンチ・グローバル化である
 ・特に中国やロシアは国内分裂を警戒している

◆中国の高度成長が日本と大きく違うのは2つ。
 1…人口が多すぎて労働力が枯渇せず、雇用側の力が強いまま
 2…グローバル化により賃金で勝負ができないこと
加えて、多民族国家で人口移動が起きると、格差が民族意識を刺激し内紛の要因に。

◆成熟した福祉国家以外では、政府のバラマキ政策は意味がない。
 ・将来が保証されていなければ、収入を貯蓄に回すから
 ・中国やロシアは国家が成熟する前に、グローバル化の波にさらされ苦しんでいる。
  日本は中国らの高度成長を羨む必要はない。

冬の時代のための経済ナショナリズム

◆貿易自由化がもたらした危機は、保護主義が救う。
 ・保護主義は国内の効率的分業・国民の結束をもたらし、経済発展につながる
 ・日本は国内で分業できるだけの規模があるから有効なはず
 ・今後は世界的に脱グローバル化に動く可能性が高い

◆経済成長の原動力として、ナショナル・キャピタルは無視できない。
 ・ナショナル~とは、各国の歴史や文化など固有の資産のこと
 ・この中には、市場に委ねると破壊されてしまうものがある
 ・例えば農業。環境や景観の保全、共同体の意義などは経済効率で捨ててはいけない価値

◆自由貿易とは覇権国の方便だ。
 ・かつてアメリカやイギリスは、実は保護主義によって力をつけてきた
 ・トップに躍り出たとたん、自由貿易を振りかざし他国の市場をこじ開ける

◆まずしなければいけないのは、海外市場からのディフェンスと内需拡大。
 ・劇的成長は期待できないが、今は瀕死の状態。10位への没落をせめて5位にとどめよ
 ・グローバル化の中でできるだけ消耗を減らし、長期的視点で立て直していくしかない

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