武士の家計事情。武士は何に金を使っていたのか?

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武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

1つの社会経済体制が大きく崩壊するとき、人はどのように生きるのか

(作者あとがきから)
バブル崩壊、官僚制の失敗、家計の不安といった今を過去に投げてみる。「明治の人はどうしていたのか」と問いかけずにはいられない。このそこからかえってくるヒントを受け取る。これが歴史という過去と現在のキャッチボールである。
社会変動のある時代には「今いる組織の外に出ても必要とされる技術や能力を持っているか」が生死を分ける。
江戸の歴史を通じてモビリティーの重要性を解く一冊。

江戸時代は本当に封建制だったのか?

武士には2つの種類がある。一つは、主君から領地(知行地)を分与された「知行取」これは給人とも呼ばれる。もうひとつは、領地を分け与えられず、米俵や金銀で俸禄を支給される「無足」である。新しく知行取に取り立てられることを「新知」という。

なぜ武士は自分の領地をリアルな土地として認識しにくいのか?それは簡単である。武士はその多くが、自分の領地に全く触れなくても、自動的に年貢が手元に入ってくるシステムの中で生きていたからである。どこに領地があろうと関係なく石高に応じた年貢米が藩庫から運ばれれてくる制度が存在した。

本来武士が領地を支配するには、以下の行為を通じて絶えず土地と人民に関わる必要がある。これを学術的には地方知行制という。

1 勧農
2 裁判
3 租率決定
4 年貢収納

しかし現実にはこんな手間のかかることはやっていられないし、藩士が知行地から好き勝手に収奪して良いシステムでは、取り立てすぎ、横暴な振る舞いなどによって百姓が逃げまわってしまう。世の中が平和になって零細農民が精密な作業をする時代になると時代に合わない。故に1~3は藩の官僚機構が肩代わりするようになった。この機構は場合によっては4すらも代行した。
このように、「江戸時代の藩官僚は高い行政能力を持っており」、そのまま明治国家に移植されていくことになる。

近世日本の封建制は、領主と土地の結びつきが非常に弱く、ヨーロッパなどの感覚で言えば、とても封建制といえるものではなかった。明治維新が起きると武士階級があれほど簡単に経済的特権を失った秘密は実はここに隠されているように思う。「現実の土地から切り離された領主権は弱いものであり、トップダウンの命令一つで比較的容易に解体された」のである。しかし武士の領主権が現実の土地と結びついていた鹿児島藩などではそうは行かない。西南戦争など激烈な士族反乱を経験しなければならなかった。
(仕事の成果やその基盤と給料が結びついてないと怖いのは今でも同じですね・・・)

江戸時代の給禄制度の問題

江戸時代の給与制度には欠陥があった。一番の問題は現在の職務内容とあまり関係のない所で禄高が決まっていることであった。由緒が禄高を決定し、現職は脇役に過ぎなかった。現在ではなく過去が禄高を決めていた。

江戸の武士は借金漬け

借金が年収の二倍という数字は驚くに当たらない。むしろそれが平均的な武士だった。

旗本や大名はともかく、一般的な武士の借金の相手は誰だったのか?前近代社会は「身分を超えてカネを貸すリスクの非常に大きな世界であった」ことを忘れてはいけない。借金の5割は町人からであったが、4割は渦中の武士からの借入であった。武士の金融が武士身分の内部でこそ活発に展開していた。武士の親族関係は、すぐさま金融関係に転化されるものであった。家柄・格式に見合った縁組が施行されるのは、身分意識からのみではなく、経済的理由も大きかった。

身内であっても金利は15%を越えるのが通常であった。江戸時代の武士は金融の取引費用が高く、高金利に家計を押し潰されていた。

武士は何に金を使っていたのか?=身分費用高すぎ

江戸時代前期は、武士が国内総生産の50%近くを取り上げて消費していた。後期になって農業以外の生産が伸びてくると25%程度に低下したと言われるがそれでも大きな割合であった。

・家計を圧迫していたのは借金の支払や頼母子講などの金融的経費。これが3分の1
・家計が苦しくても圧縮できない費用が祝儀交際費や儀礼行事入用。武士身分としての格式を保つために制度的・慣習的・文化的に支出を強いられているんだ!
・上で上げたような金融的な意味でも、教育や情報的な意味でも、子の若死のリスクに備えて養子のもらい先を確保する意味でも、連座制という制度の存在を考えても、親戚同士との付き合いをないがしろにすることは、家の存続のために欠かすことは出来なかった。
・さらに先祖を大切に守ることは、身分を保障する根源でもあったからこれも欠かせなかった。
・身分費用の理不尽なまでの高さは、のちの明治維新時の特権剥奪に武士が従った理由の1つではないか。

(2章途中まで。「一番おもしろいのは5~6章の幕末時の武士」の部分なので、ぜひ読んでみてください!)

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