シャカの実像を明らかにする!仏教 第2版のあらすじ・感想

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仏教 第2版 (岩波新書)

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 シャカの実像を明らかにする

あらすじ

 宗教に関する多くの著書は、その信者又はその宗教に好意をよせる人によって書かれるため、客観的評価が難しい。系の内部からその系を完全に記述するのは不可能である。
 仏教に関しては、一神教と異なり聖書やコーランに相当する基本経典がなく、膨大な解釈経典(お経)のどれを重視するかで、見解が分かれる。
 

 ベルリン大学の仏教学者ベックは、パーリ語仏典だけでなく、サンスクリット、中国語、チベット語の古い仏典を幅広く比較研究し、それらに共通する要素をもとに、実在したブッダはどのような人物か、彼が説いた教えは何か、明らかにしようとした。しかもこの本は西欧の読者を対象に書かれているため、随所でキリスト教との対比がある。その意味で、本書は仏教を客観的にとらえた名著といえる。

 第Ⅰ部では歴史的実在としてのブッダが論じられている。著者はブッダ伝説と歴史上のブッダの分離を試みる。それによるとブッダはシャカ族王家の出身で、死没年は紀元前477年または480年であり、前5世紀の人物となり、孔子やゾロアスターやターレスよりも100年ほど遅れて生まれた。結婚して家庭をもったあと、当時のインドの習慣に従って出家し、ヨガの修行をした。肉体的苦行によっては悟り(アムリタ)が得られないことを知り、宗教者として出発した。

 第Ⅱ部ではブッダが説いたと考えられるその教理が述べられている。ブッダによって「歴史の展開のうちで、初めてここに人類思想、ただの民族宗教でない宗教が生まれた」。それを可能にしたのは「ブッダのすぐれた人格の力」であった。ブッダの教えの核心は、ベナレスの鹿野苑で説いた最初の説法に見られる。物質的欲望の充足を第一とする生き方も、すべてを否定し苦行を求める生き方も、避けなければいけない。正しい見解、正しい考え、正しい言葉、正しい行い、正しい生活、正しい努力、正しい思い、正しい瞑想を追求する中道の法が大切である。生老病死は苦悩である。苦悩の起源は官能の渇望であり、これにより輪廻が起こり、煩悩をともなって欲望が起こる。苦悩の克服には官能の渇望を絶滅し、煩悩を消滅させることである。つまり「心の平安」により苦悩を個人的に解消する道である。この意味で、ターレスに始まる自然哲学が医学へと発展し、生老病死に伴う苦悩を技術によって除去しようとした西洋のとった道とは対照的である。

感想

 この本でベックが採用した方法が日本の仏教学に導入され、中村元などの業績が出はじめるのは戦後のことである。訳者の渡辺照宏(1907~77)は在野の優れた仏教学者で『日本の仏教』(岩波新書、1958)は名著である。日本の主な宗派について、その開祖、性格、特徴とよって立つ経典についてわかりやすく解説し、日本の仏教はいずれも古くからの民俗信仰の影響を受けており、ブッダが説いた教理からかけ離れているとする。松濤弘道『お経の基本がわかる小事典』(PHP新書、2004)は84,000冊あるお経の主なもの約150点を平易に解説している。

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