環境ノイズエレメント

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環境ノイズを読み、風景をつくる。 (建築文化シナジー)

イレギュラーの良さ

 ノイズというのは通常は雑音と訳され、処理対象となる情報以外の不要な情報のことをいう。翻って環境ノイズというのは、現在のある「計画」を純音としたときにその場に元々ある物理的要素が場合によっては雑音になることもあるというように捉えられる。ただしそれは異物感を生むものの、必ずしも負の要素であるとは限らない。むしろその雑音こそが都市の固有性や土地で起こった出来事の痕跡を生むこともある。

環境ノイズエレメント

 都市は基本的に、ある特定の人の意志に基づいた「計画」によって形成される。ところが都市ができる場所にはそもそも、地形や自然物、土木構築物や過去の都市計画など、「計画」者がコントロールしきれない要素が存在しており、両者が重なることで本来の「計画」が志向した風景の秩序に「ほころび」が生じることがある。これを環境ノイズエレメントと言い、筆者によればどのような都市や風景であっても環境ノイズエレメントを抽出することは可能であってそれは観察者の眼力、つまりリテラシーにかかっているという。
 本書では東京・大阪近郊と中心に国内にある環境エレメントの事例が200か所紹介されており、その中で代表的な16の事例に詳しい解説がなされている。具体的には竣工時期の異なる線路同士によって発生する三角敷地(ヘタ地)、不整形地形に直行グリッドをそのままトレースしてかえって起伏の際立った土地、寸法や形態の似ている遺跡を駐車場に転用した例などがある。最後の例など、価値ある遺構をありのままの状態で残そうという歴史的建造物保存とは真逆のことを行っている。筆者の言うとおり、まさしく「機能が形態に従う」例である。ノイズという名のつく通り異物感を醸し出す一方で、両者の本来の持ち味だけでは発生しない出来事が起こるという点に環境ノイズの特徴がある。
 筆者はこれらの事例を、土地がもともと持つ「素材性」と新たな計画をかぶせる「加工性」という観点から読み解く。更に前者を自然性・土木構築物・文化財の3種に、後者をトレース・切断の2手法に分類し、それを応用して環境ノイズエレメントを創出する設計手法「クッキングアーバニズム」を提唱している。広義には元々ある土地のポテンシャルを活かして設計を行うということでもあるが、料理をするように(設計というよりは編集に近い)環境ノイズを生み出すことができるという。

まとめ

 このように細かい事例から環境ノイズエレメントを読み解き、ある程度の体系化を行っているという点で、本書はこれらエレメントを見つけるリテラシーを育む役割もあるだろう。しかし都市を一から十まで完璧に制御できない限り環境ノイズは必ず発生する。その重要性を鑑みれば環境ノイズエレメントの良し悪しを評価する必要もあるだろう。本書では「土地にアイデンティティを残す」と回答しているが、その意味では近年言われている近代主義への批判とあまり大差ない、「面白い」とか「珍妙である」以上の答えが得られているとはいえない。だからこそ、環境ノイズエレメントに対して珍妙さ以上の良し悪しを議論することができれば、より近代主義による「計画」を克服することにつながるのかもしれない。

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