物理学者、ウォール街を往くの書評・感想まとめ

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物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進

概要

 素粒子物理学者から、話題のウォール街のクオンツという、ファンドマネージャーみたいなことをやる職業に転進した著者の半生がつづられている。
 素粒子物理学といえばつぶしが利かない典型例のように思えるかもしれないが、まだそこからだって先に道はあるわけで、どこまで行ってももう終わりということはないのかも知れない。

物理学者からウォール街へ

 あなたが研究生活をリタイヤしようと考えている方ならば、2章から6章を読まれるとよいでしょう。研究生活の苦悩と決断が赤裸々につづられています。
 あなたが金融界での成功者としての著者を知りたいとお考えならば、9章から15章を読まれればよいのではないでしょうか。金融工学の実践史を知ることができるでしょう。そして、決して甘い世界ではないことも。

物理学の計量経済学への応用

 本書は素粒子物理学の研究者からゴールドマン・サックスのクオンツに転進した著者の半生と周辺史を語った作品です。大学院時代の話で出てくる数々のビックネームには本当に驚かされます。そんな天才達に囲まれ、競争し、生活の糧を得るために転々とする生活に絶望し、著者は研究生活に挫折(本人の主観で!)することを決断します。
 最初の就職先のあまりの官僚的な組織に嫌気が差し、移った先は投資銀行。研究者時代に培った物理の知識とプログラミング技術を利用し、計量経済学の実践に励むことになります。
 ビジネスの世界はある意味お金を稼ぐことが全てです。クオンツはどちらかというと裏方の仕事なので、直接お金を稼ぐのはトレーダーの役目です。このため、いかにクオンツが利益に貢献しているかを示すための熾烈な戦いが繰り広げられます。このような、ある意味醜い争いについても、著者は正直に、自分の気持ちも含めて、描き出します。

物理と経済の相違点

 著者は包括的な金融モデルは存在しないと言い切ります。確かに、物理学においては自然界にある物体は、気まぐれに動いているようでも、何らかの規則性に従って動くと考えられます。しかし、市場を動かす人間は気まぐれです。例えば、降水確率50%と聞けば、傘を持っていく人、持って行かない人、そもそも家から出ない人など、様々な反応があり、しかもそれは気分によって変化します。そう考えると、市場を完全に支配する理論の構築などはできないのでしょうね。

総括

 惜しむらくは邦訳者が物理や数学にはあまり詳しくなかったのであろうことです。当初は、全く文意がとれず、途中で読むのをやめようかとも思いました。でも、そこでめげずに読んだ方が絶対に良いと思います。

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