日本には原発を保持するだけの能力がない! 「まやかしの安全の国ー原子力村からの告発」

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まやかしの安全の国  ―原子力村からの告発  角川SSC新書 (角川SSC新書)

概要

著者は社会技術システム安全研究所長。技術や組織などさまざまな角度から原発の事故解析と安全研究を行ってきた。

過去を含めた原発事故の分析を行うとともに、甘えや驕り、なれ合いが支配する日本には原発を保持するだけの能力がないことを指摘する。

この国に原発を持つ覚悟と能力があるのか?

◆ハード(設備)とソフト(人材)両面において、日本には原発を持つだけの能力がない。今回の事故では避難指示が遅れ、政府と東電は事実を過小評価して分析・対応が甘く、疑義を呈する専門家もいない。なにひとつ対応できなかった。

◆原発を動かすには、それなりの覚悟と備えが必要ということ。今回の事故で全く責任を果たせなかった政府や保安院、安全委員会は解体して新しく強力な組織を作らないと、安全を本当に追求する技術や社会システムが育たない。

この国の原発安全対策は誰がしてきたのか?

◆01年安全委員会が内閣府に移動し、権限が弱い諮問機関に。原子力安全・保安院は経済産業省に設置され、チェック機能が働かない。安全審査部会は、権威はあるが専門ではない人をそのつど招集し審査。官僚もすぐ異動するので長期的な視点がない。

◆予算はもらえるが反対意見は認められないので、大学や研究所は堕落。かくして、裸の王様と言うべき原子力村ができ上がり、安全に対する提言が黙殺されていく。

安全神話はいかにして作られたのか?

◆私が日本原子力研究所に入所した75年、すでに研究発表の検閲が行われていた。同年NRC(原子力規制委員会)のラスムッセン報告書が、2000人以上死者が出る事故は1炉当たり10億年に1回と掲載。原発の安全が裏付けられたとされてしまう。

◆スリーマイル島事故で、アメリカは事故調査委員会を発足させ、わずか半年後に調査報告を出した。NRC委員長は更迭され組織は改編、改善策の徹底が図られた。さらに外部にも調査を依頼し複合的視点で分析。今回の日本の対応は30年前のアメリカにも劣る。

◆日本は、技術立国の驕りから安全追求を軽視している。また「安心=安全」という考えも問題だ。安心感を作りだせば安全を達成したことになってしまうからだ。

データ分析して見えてきた福島第一原発事故

◆1・3号機の水素爆発時より、実際は2号機の格納容器破損時と4号機の火災時のほうが線量が上がった。放射性物質の大規模な漏出は水素爆発だけでなく、格納容器の破損や再溶融によっても起こることを示している。

◆データからは、いったんメルトダウンした後に3/20ごろ再溶融が起こったと推測できる。放射性物質が首都圏や静岡に広がったのは、最初の爆発ではなくこの再溶融のもの。注水を怠らなければ防げた可能性があるだけに、人災といえよう。

過去の事故に学ぶこと

・スリーマイル島事故/配管に樹脂が詰まるという小さな事象が、判断ミスを経て炉心溶融に至った→重大事故は想定外の過程を経て現実に起こる

・チェルノブイリ事故/原子炉の設計に欠陥があるうえ、教育不足で現場が適切に対応できず→原発の安全はマニュアルだけでは確保できない

・JCO東海村臨界事故/生産の効率化のため、硝酸ウラニル溶液の製造法が規定外だった→現場に正しい知識と危険性の伝達を

共通するのは、現場の教育不足やマニュアル重視による「思い込み」だ。

原発の安全と安心

◆人的ミスを防ぐべく自動制御が進歩しても、現場の問題解決能力が低下するデメリットが生じる。想定外の事態に対処できるのは最終的に人間、という事実を忘れてはいけない。

◆安全管理と経済効率は本来正反対のもの。例えば、100年に一度の津波対策は経済効率からみると悪いはず。なのにいつからか、トラブルが少ない(=経済効率がいい)ことが安全管理だと誤解されてしまった。

◆安全と違い「安心」は感情の問題。日本人は、安心を誰かに保証されるという人任せな態度に慣れすぎていた。いまや事故が起こり、日本人は安全かどうか自力での判断が求められる。「安心を保証して下さい」という甘えはもう通用しない。

軍隊のない国が原発を持つということ

◆2011年9月、事故後初の日本原子力学会が開催。だが、事故に関する研究発表はわずか3%弱にとどまった。政府や東電が怖いのか。科学者の覚悟のなさ、思考停止に落胆した。

◆ドイツは事故を受け、過去の原子力政策の誤りを認めて廃止を打ち出した。アメリカは推進に向かうが、NRCや核部隊はしっかり組織している。自前で収束もできず、検証もなれ合いで済ます日本に、原発を持つ覚悟があるのか。

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