新宿には「鮫」だけじゃない、佐江もいる。

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黒の狩人 下 (2)

「北の狩人」、「砂の狩人」ときて、今回の狩人は、前二作で脇役として主役の魅力を
存分に引き出していた新宿署組織犯罪対策課警部補の佐江だ。

中国人のバラバラ死体が千葉や埼玉で見つかる。
さらに、バラバラではないが、車のトランクに詰められた中国人男性の死体も
東京で発見された。

最初はなんのつながりもない事件だと考えられたが、被害者の体には
「五岳聖山」を表す刺青が入っていた。

佐江は上の命令で、補助員として試験採用された中国人の「毛」と
コンビを組まされ、中国人殺害事件を追うことになる。

そして、外務省アジア大洋州局中国課職員の野瀬由紀も別の方向からこの事件に興味を抱いた。

この三人が出会い、いつしか「チーム」として絆を強めていく。

だが、この事件は単純な殺人事件ではなかった。

中国国家安全部、スパイ、やくざ、中国マフィアなどが入り乱れ、絡まりあい、
かなり複雑な様相を見せ、物語は新宿署の一刑事と警視庁公安部との駆け引き、
腹の探り合いへと広がっていく。

感想

複雑化する物語だが、スピードのある展開と、闇を抱える男たち、闇社会でしか
生きるしかなかった者たちの慟哭が聞こえてくる文章はいつも通り。

「狩人」シリーズの中の佐江の立ち位置とは…。今作の中に次のような述懐がある。

「俺はいつだってカス札だ…切り札の近くにいて、しかし決して
切り札になることはなかった。梶雪人、西野、二人の男の顔が脳裏に浮かんだ。
あいつらは切り札だった。そして、新宿から消えた。カス札の自分だけが、
こうして取り残されている。」だが、「カス札にはカス札なりの意地がある」

この意地なのだ。体の真ん中を意地という太い芯が通っている。
ちょっとやそっとでは折れない芯だ。

そして、私たちは、この芯を持つ男たちの生きざまに泣かされる。
まだまだ、新宿で生きて狩りをする男たちの物語が読みたい。
新宿には、「鮫」がいる、そして、佐江がいる。

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