トラウマは、「安全」でない状況に対する適応行動から生じる。

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ポリヴェーガル理論入門: 心身に変革をおこす「安全」と「絆」

ポリヴェーガル理論とは

 安全でない状況におけるストレス反応として、従来考えられていた「闘争/逃走反応」以外に、エネルギーの省力化や死んだふりなどの生存戦略として生物に組み込まれた「不動化」の経路があることを示し、安全でない状況への適応行動がトラウマとして定着することを提唱している。
また、その治療として、安全であると感じることが癒やしを生み出すことに焦点を当てている。

従来のストレス反応の解釈の問題点

 従来の医学では,ストレスに晒されたときの反応は「戦うか、逃げるか」というたった一つの反応しかないと考えられてきた。その反応には交感神経の活性化を伴い、アドレナリンが分泌されて身体が過剰に活動的になる。
 一方で、強い恐怖に晒された際に気絶してしまうように、呼吸、心拍を弱め、無抵抗の状態になる反応も存在し、これまで注目をされてこなかったが、そうした「不動化」の反応も、生存戦略の一つとして生物の身体に備わっていることを指摘している。この反応にはリラックス状態を生み出すものとして知られた副交感神経の活性化が関わっており、善玉のように語られてきた副交感神経が、ときに心臓や呼吸を止めて人を死に追いやることもあるという点も指摘されている。

ストレス反応は意識的なものではない

 MRIに入ることを楽しみにしていた筆者が、実際にMRIの閉所に入ることになった際に、激しい動悸に襲われた例をあげ、頭では「安全である」と考えていても、身体がストレス反応を起こすことがあることを指摘している。こうした反応をニューロセプションと名付け、知覚よりも反射に近いものとして定義している。

トラウマと自閉症の関連、聴覚過敏へのアプローチ

 互いの相関関係については触れてはいないが、どちらも社会交流システムに問題が生じる点で一致している。本書では、諸説ある議論には踏み込まず、聴覚過敏の緩和という一点に絞ってアプローチが試みられている。

聴覚過敏へのアプローチ

 LPP(リスニング・プロジェクト・プロトコル)と呼ばれる手法では、アルゴリズムによって強弱が調整された韻律に満ちた歌声を聞かせる。歌声には人を安心させる作用があり、強弱を調整してかすかな声を聞き取らせることで、中耳の筋肉の調整を行い、安心できる高周波領域の音を聞きやすくさせる。

感想

 トラウマなどの社会交流システムの不全にはストレス反応が存在しており、安全であるという感覚が非常に重要だという点に学びが多かった。聴覚過敏へのアプローチは、問題の一部分のように感じられるかもしれないが、過敏な感覚や知覚を脱感作することで治癒に導くという視点は、トラウマにおいても、自閉症スペクトラムへの対応においても重要になってくるのかもしれない。

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