知的生産における「情報」の重要性

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知的生産の技術 (岩波新書)

本書の主題は「情報の取り扱い方」である

この本はタイトルの通り、学術研究などの知的生産、今で言えばクリエイティブな作業を行う際に、作業をより円滑に行うための技術を紹介している。

知的生産とは複数の作業を含む

ではこの本には、多彩な発想をポンポン繰り出すための発想法などが含まれているのか…といえばそんなことはない。この本で論じているのは、それ以前の創造的な作業を行う「ためにその前段階でどのような情報の整理を行なえばいいのか」である。それはひとえに、「知的生産の作業にはいくつもの系列があり、少しでも事務的な作業の負担を減らすことで、創造的な作業へエネルギーを回す必要があるから」である。

各章を裏で繋ぐ「情報」

1章から11章まで、話のネタは違えど裏に通ずるテーマは一貫している。すなわち

  • 情報は収納時には整理され、活用される際には組み合わせられるもの
  • 情報というものは一定のルールに従って整理されることで、用いる者への負担を減らすことが出来る
  • いったん整理され、使う際は再構築してつながりを作り、アウトプットにおいて形を整える
である。とりわけこれらを全て満たす『カード』というツールの存在は、著者には運命のツールとでも呼ぶべきものであったようだ。後に「京大式ノート」として商品化されるのも納得の汎用性である。

プリミティブ、ゆえに汎用性高い

この本の中で紹介される技術自体は、だいたいはアナログであり、この情報化社会にこんな…と思う人も、もしかしたら居るかもしれない。だが、そう捉えるのは率直に言って早計であろう。これらの技術から読み取るべきは「いかに整理し、分化すべきか」という根本思想であり、そこを外さなければ現代のツールにおいても技術を応用することは容易い。
そう、本書はハウツー本であると同時に著者の思想を語る本でもある。紙面の裏に流れる著者の思想を、発想を、こだわりを、じっくりと読んで欲しい。

梅棹忠夫という時代の先を生きた学者

ここから先はあまり本書の内容とは関係ないであろうから、興味がなければ読み飛ばして構わない。
先程から「情報」「情報」と言っている。この情報社会、確かにそれは最重要のもののひとつであろう。では、本書がいつ出版したかといえば、初版は1969年。なんとワープロソフト「一太郎」の生まれる15年近く前。実際に本書の中では氏は次世代の執筆道具としては「タイプライター」を挙げている(上述の規格化という考えに非常にマッチしているため)
その他にも氏は情報学に関する本を1990年前後からいくつも執筆されている。その先見性は、今にあって全く衰えるものではないだろう。

感想

実を言うと、最初読もうと思った時には、多くの人が考えるであろう読書術やノートの取り方、発想法などを期待して読み始めましたが、後々から違うのだ、これはそれ以前の姿勢や土台を作る本だと気づき、良い意味で裏切られました。特に好きなのはやはり、5章 整理と事務 の章の『このように、知的生産の空間の機能を〜なにひとつおこなわれていないのである』というところです。勉強した気になりがちな自分には耳の痛い忠告ですが、それだけに分けて作業することの大切さを痛感しました。
ちなみに、B6ではありませんが、僕もカード、使い始めました。

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