現場の混乱をなくし、ボランティアの力を最大限活用した災害ボランティア「石巻モデル」に学ぶ教訓

3390views折笠 隆折笠 隆

このエントリーをはてなブックマークに追加
奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」 (朝日新書)

概要

被災地のボランティア活動は、混乱を極める自治体にとって時に負担になる。そんな中、機能的な組織作りでボランティアの力を生かした宮城県石巻市の成果をレポートする。

水の都が消えた日

◆地震発生によって、石巻市の沿岸家屋や工場群は壊滅。災対本部がある市役所は津波により水没し、ネットや携帯電話も不通に。北上川流域では津波が遡上、河口から4kmの鉄筋の橋が折れた。人口16万2000人のうち3172人が死亡、759人が行方不明(9/15現在)。

石巻モデル誕生

◆阪神淡路大震災以降、被災地の社会福祉協議会(=社協)がボランティアセンター(=ボラセン)を立ち上げ、ボランティアを受入れるのが一般的になった。が、行政色が強い社協は公平性を重視して柔軟性に欠け、自発的に被災者のニーズを汲み取るボランティアNGOと対立するケースが多い。

◆被災地ではマンパワーの問題から、受入れの対応だけで疲弊。せっかくのボランティア志願を断ってしまうことがある。他に炊き出しの重複など、現場での混乱は大きい。

◆石巻では、ボランティアと地元の事情ともに精通する、建設会社経営・伊藤秀樹氏の提案で「石巻モデル」の原型が出き上がる。
・食糧支援、医療支援、移送、子ども支援など9つの分科会を創設。NGOを各得意分野に振り分ける
・全体の連絡会を「石巻災害復興支援協議会」とする
・団体ボランティアは同協議会が受け入れ、並行して個人ボランティア受け入れは社協が対応

行政とNGOが役割分担しながら連携する。ボランティアの力を最大限活用する画期的なモデルとなった。

大学が拠点になった

◆石巻専修大学が校舎の一部やグラウンドを開放、避難者受け入れやボランティアの滞在を認めた。大学の地域還元という観点からも意義がある。

◆通常は飲酒によるボランティア同士のトラブルが多発するが、今回は大学内ということで規律が守られた。また、被災地から適度に距離があり、ボランティアの精神的負担が軽減された。

顔の見えるCSR元年

◆CSR(企業の社会的責任)の一環として、企業ボランティア活動が目立った。
・ブリヂストン/義援金ほか、社員をボランティアとして派遣
・モンベル/アウトドア義援隊を組織し、寝袋や防寒具を被災者に支給
・日本IBM/アメフト部員が瓦礫やヘドロを回収した。重機を上回る驚異の効率
・三菱商事/社員をチーム分けし、3泊4日のボランティアを交代で送り込む
・ソフトバンク/iPadや携帯電話を被災地に1万7000台送付。被災状況の確認に役立てる

行政とボランティアの連携

◆石巻モデルの興味深い点は行政とボランティアの連携だ。ボランティア代表が警察や自衛隊と並んで災対会議に出席し、成果を報告。行政はボランティアの不安定さ(無責任なドタキャンなど)を嫌う傾向があるが、徐々に信頼へと変わる。

◆とくに食糧支援で、協働が威力を発揮した。協議会が炊き出しを調整。自衛隊は大規模避難所を中心に活動し、小回りが利くボランティアが補完する。炊き出しが減ると、ボランティアは分散する半壊居住者へのデリバリーも始めた。

災害ボランティアは企画力

◆ピースボート災害ボランティアセンター理事の山本氏は、ボランティアに必要なのは企画力だと断言する。根本的に被災地がどうすれば受け入れてくれるか、から考えるべきという。作業してから気づいたことや提案を情報共有し、すぐ実現する力も求められる。

石巻モデルの教訓

(1)「できない」ではなく「できるところに割り振る」
例えば炊き出し。社協は混乱を避けるべく、受け入れに消極的になる。石巻ではこれをNGOのピースボートに打診して打開した。社協が悪いのではない。連携して窓口を増やすことで、善意を無駄にせず多角的な支援が可能になったということ。

(2)ボランティアに居心地のいい環境づくり
石巻では大学との連携により、宿泊場所とトイレが確保できたことが大きい。石巻市と大学とで検討されていた防災協定を参考にしたい。また、各自治体は平時からボランティアの特性を勉強し、被災時の受け入れ方をきちんと想定しておくべきだ。

(3)企業との連携
企業は各ジャンルのプロフェッショナルでもある。ボランティアとしても素晴らしい活躍をする。自治体は速やかな受け入れ態勢を確立しておきたい。

(4)ボランティアの責任感・解決能力
石巻ではボランティアが災対会議に参加したが、それは出席者に能力があったからこそ意義があった。ボランティアには、問題発見から解決まで具体的に実現させる力が求められる。

伊藤氏は今後、ボランティアが再び被災者と出会える仕組みを検討中。参加10万人が再び訪れればイコール観光客になり、復興につなげることができる。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く