あの頃の痛み

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桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

 クラスの中心人物だと思われる桐島が突然部活を辞める。そこから始まる周りのクラスメイトたちの群像。

 桐島は出てこない。名前だけ。それでも題名のインパクトは偉大。1人の生徒が部活を辞める。ただそれだけなのに。次々と起こる影響。

 話の所々に実在している固有名詞が登場し、その年代が分かるとともに、その描写から物語に浸かってしまう。

クラス内の上下関係。異性同性との距離感、付き合い方。案外小さな事だったよなと振り返って思える事でも、当人たちからしたら大問題。そのもがくさまがリアルで、瑞々しくて、痛い。 

 影響を受けてしまう脆さのようなものが、高校時代には確かにあった。今では忘れ去られた記憶だけれど、青春という言葉は、万能だけれど平等ではない。誰もがその場にいたはずだけれど、みんなが幸福を味わったわけではない。その時のヒリヒリ感、話の随所にちりばめられている。うんうん、分かる、分かるよ。それぞれの登場人物に焦点があてられて語られていくので、必ずどれかの人物に自分を重ねてしまう。ああ、こんな感じだったよな。こういうこともあったよな。

 同世代を生きている人たちには、もがき苦しみながらも、その正体がつかめない中でも、何かしらに手を伸ばしてみようと、そんな気持ちになれると思う。もちろん同世代じゃなくても、その時の記憶を思い出して奮い立つ事が出来ると思う。

考えちゃいますね、あの頃と、今と。

感想

デビュー作とは圧巻です。

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