犯罪者と家族は別物だが,家族のみが果たしうる社会的責任もある

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息子が人を殺しました 加害者家族の真実 (幻冬舎新書) [kindle版]

その時家族は

家族に情報は入らない

 家族が警察から任意同行を求められ,帰ってこない場合もあるが
 多くは,報道により初めて夫や息子の逮捕を知る
 犯人が家族への連絡を望まないと,弁護士も何も教えてくれない
 夫や息子,兄弟の収監先すらわからないこともある
 報道により過去にも逮捕歴があったことを初めて知る家族もいる

犯行直後に家族を襲う出来事

1)犯罪者仲間が家に押しかける

 犯罪者仲間が家に押しかけ,失敗した腹いせに窃盗,家族へ暴行や強姦を行うこともある

2)警察に家族も共犯とみなされると事情聴取を受ける

 逮捕されると自動的に弁護士が付くが「参考人」としての事情聴取だと弁護士は付かない
 自分で弁護士を手配しなければいけないが,自分が「参考人」であることが分からず
 取り調べに疲弊し,冤罪を生むこともある

3)報道が家に押しかける

 窃盗などの事件でも,大きな事件がない時期だと家に報道が押しかけ
 周囲からの圧力により,引っ越しを余儀なくされることもある

事件後,家族を苛む出来事

1)離縁や失業

 兄弟姉妹の縁談が破談になることや,離婚につながることもある
 犯人の婚約者が妊娠をしていると,中絶を選ぶことが多い
 職場を追われる,店の営業を続けられなくなる場合もある(続けられることもある)

2)周囲からの誹謗中傷

 噂は「事実」ではなく,「面白い話」が広まる
 引っ越しを余儀なくされることもある
 転居費がないと,どれだけ理不尽なことを言われても耐えるしかない
 セックスレスでない夫婦からも性犯罪者は出る
 夫が捕まって,初めて夫の不倫を知る妻もいる

3)宗教関係者や霊媒師が来る

 宗教に入信したり,特殊詐欺に引っかかりやすくなったりするため
 さらに宗教関係者や詐欺師が群がるようになる

4)被害の弁済や損害の補償等金銭的負担が発生する

 子供の進路が変わる(私学の退学や進学を断念させる)こともある

家族への制裁は犯罪の抑止力になるか?

1)犯人には逮捕後の世間のことはわからない

 自分が逮捕された後の家族の苦労や,家族の自殺を知らない受刑者も多い

2)家族への報復として罪を犯す受刑者もいる

 罪を犯す人は,他者との信頼関係の構築経験が乏しい
 家族への制裁がまったく意味をなさない(むしろ受刑者が喜ぶ)場合もある
 一方,犯行後の家族の窮状を知り,家族を許す受刑者もいる

3)そもそも正常な判断ができず起きた犯罪も多い

 犯罪の原因が分からなければ逆効果(社会への恨みを根深くさせる)の場合もある

4)社会的制裁を恐れた家族の弁済により犯罪を助長することもある

 家族が被害を弁済するなど尻拭いをしたため,より悪質な犯罪に至ることもある

加害者家族の見せしめによる犯罪抑止効果は低い

著者はなぜ加害者家族を支援するのか

1)加害者家族としての責任

 加害者家族は被害者に対して法的責任(刑事責任,民事責任)と道義的責任を負う
 加害者家族が社会生活を送れなくなると,家族としての社会的責任を果たせない

2)家族にしかできない加害者が更生するための役割がある

 加害者の更生に家族の存在は不可欠.愛を感じたことのない人間に,大切な人を失った悲しみを,理解することはできない.自分の問題を社会批判にすり替えないようケアをしなければならない

被害者を軽んじるつもりはなく,被害者家族支援と加害者家族支援は並行して行うものである

感想

 数年前から「加害者家族の支援」を新聞等で目にするようになり,某SNSで「子供を東大に入れる方法より,犯罪者にしない方法が知りたい」という意見を見て,加害者心理や加害者を生み出す社会的病理に興味を持ち,手にした本です.初版は2017年.
 いろいろ思うこともあったのですが,家族を加害しても問題の解決にはならない(他所でも同様の事件が起きるだけ)ので,被害者や被害者家族はともかく,何の関係もない第三者は,余計な口を出すべきではないな との思いを強くしました.
 あと,明言されておりませんが,ほとんどが男性犯罪者の例であり,女性犯罪者の例も知りたいと思いました.
 読みやすく,ストレスなく読めます.一読しておくと,もし,万が一,自分が巻き込まれた時に,どのように対処をすればいいかわかりますし,無用な偏見が減らせるのではないでしょうか.

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