上下巻のまとめ

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帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)

ヒトラーが現代2011年に蘇り,ユーチューバー芸人に仕立て上げられる.

ところどころ吹き出してしまうほどブラックなユーモアがある本書は,
しかし単純にヒトラーを笑って気散じをするような娯楽本ではない.

ガス室でユダヤ人を大量殺戮した絶対悪としてのヒトラーに対して,
彼の組織したナチスに対して,人々は,最も肝心な点を考察することなしに
脊髄反射的に拒否し,タブーとしてきた.
最も肝心な点とは,人々がヒトラーを熱狂して支持したという事実である.

つまり,ヒトラーと彼の思想は,悪一色の単純なものではなく
部分的には人々の支持を得るものを持ち合わせていた.
本書には,ヒトラーの絶対悪としての思想とともに
人々の支持を得るような魅力的な一面もふんだんに書かれている.
ある場面では読者はヒトラーに共感しかねないようにも書かれている.
というのも,ヒトラーの持つ強い信念を真に受けることができない人々は
ヒトラーの言葉を,自分が理解可能な範囲で自分の都合の良いように解釈してしまうからだ.
こうした言葉のすれ違いの中で,人々はヒトラーと自発的に友情すら築いてしまう.
この様子が本書には実に自然に表現されている.これは恐ろしい事態に違いない.

ヒトラーの持つ強い信念

それは,彼のいる境遇(なぜか2011年にタイムスリップしている,等)を,
どうして,もしも,とくよくよ考えず
神が与えたものとして全肯定し,
だから,ゆえに,とドイツ アーリア民族の幸福のため全力を尽くして生きること.

彼にとって,目標とは
常人にとってのそれのような
当座の成功が約束されそうだから,それを選んだにすぎないものではない.
彼にとっての目標とは,命をかけるに足る真の意味での勝利である.

こういう信念の持ち主には,常人は背骨を持たない軟体生物に見えるであろう.
それらの思想を統制し,それらから支持を得ることなど容易いことなのだ.

本書の最後では,
実直で優秀な,良い意味で常識ある青年が
ヒトラーを敬愛し,ヒトラーを支持するスローガンを考案する.
この文句も,なんとも秀逸にできている.

帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)

帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)

  • ティムール・ヴェルメシュ

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