丁寧に紡ぎ上げられたミステリー小説の決定版!

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てのひらの闇 (文春文庫)

主人公は飲料メーカーの宣伝部課長、堀江雅之。

 三月、早朝の雨の中、酔い潰れて六本木の道路脇のガードレールに寄りかかっていた堀江に、ドゥカティに乗った娘が声をかけてくる。
「なんだ、まだいたのか。こんなとこにさ」

 タクシーに乗って会社に向かおうとする堀江に、Uターンして戻ってきた彼女が続ける。
「いい忘れてたんだけどさ。あんたが探してただれかさん、その人のこと調べといてあげようか。わかるかどうか、保証はしないけど」

 このプロローグが、この小説の重要なファクターになっていることを、読者はページを繰るごとに思い知らされることになる。

感想

 飲料メーカーの宣伝部員を主人公にしたこの作品は、著者が知悉する広告宣伝の世界を背景に、単純な業界ものではまったくない。それどころか、鋭いナイフを内に秘めた、戦慄を覚えるようなミステリーだ。

 また、「読みやすい」「分かりやすい」「面白い」の三要素 ー コミュニケーション活動の基本 ー を無意識のうちに取り入れた上質のエンターテイメント小説とも言えよう。

 純文学からミステリーまで、あらゆるジャンルを縦横無尽に行き来した「伊織ワールド」を、じっくりと味わって頂きたい!

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