丁寧に練り上げられた珠玉のミステリー!

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テロリストのパラソル (文春文庫)

 主人公は脛に疵持つアル中の中年男、島村。

 晴れた日は、陽の当たる場所で最初の一杯をやることが日課になっている。

 十月の或る土曜日も長く続いた雨が上がったので、島村は新宿中央公園に出掛ける。秋の陽射しが柔らかく降り注ぎ、銀杏の落ち葉が平穏な世界を舞っていた。
 

 なにも問題はない(ように思えた)。

 芝生に横たわっている数人のホームレス。何気ない会話を交わした赤いコートを着た少女。紳士然とした彼女の父親。公園でそれぞれの時間を過ごす様々な人々。

 なにも問題はないのだ。

 しかし、次の瞬間、爆破事故が起きる。

 先ほどまで平和だった空間が、一瞬にして凄惨な修羅場と化す。

 偶然巻き込まれたかのような事故が、実は島村の過去に深く繋がっていたとは...。

感想

 誰にでも、過去はある。
 過去があるからこそ、人は今を、そして未来を必死に生きようとする。
 この小説の中でも、登場人物がそれぞれの過去に引きずられながら、今を何とか生きている。
 誰一人とて、自分の過去から逃れられない。

 何気ない風景描写が重要な伏線になり、様々な要素が複雑に絡み合い、最終章で一気に収束する珠玉の作品だと思う。

 巻末に掲載された逢坂剛と黒川博行両氏による追悼対談も必読だろう。


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