2018年度ノーベル平和賞受賞者ナディア・ムラドの物語

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THE LAST GIRL―イスラム国に囚われた少女の物語

これは、繋がっている世界で起きた真実の物語である。

イラク北部の小さな村コーチョ。物語の主人公は、少数民族・ヤジディー教徒として、貧しいながらも家族や友人と共に過ごす日常に喜びを感じていた当時21歳のナディア・ムラド氏。
ある日突然、故郷の村を襲撃した国際テロ組織イスラム国のテロリスト達によって、彼女は故郷のみならず、家族・友人、彼女が大事にしていた全てを奪われてしまう。
ナディア氏もまた、テロリスト達が組織的に計画していた人身売買の標的として、イスラム国の首都モースルに売り飛ばされ、果てることの無い暴力と性暴力によって痛めつけられ壮絶な日々を過ごすことになるのだが…

国際社会はいま、長らく目を背けてきた性暴力に注目し始めている。

ノーベル賞委員会は、2018年ノーベル平和賞の選考に当たって、戦争および紛争下において、武器としての性暴力を根絶するために尽力したことから、デニ・ムクウェゲ氏とナディア・ムラド氏の受賞を決めた。
ムクウェゲ氏は、戦争における性犯罪の被害者を守ることに人生をかけて取り組み、ナディア氏は、自分自身や人々に対して為された性暴力の証言者として、実体験を語り続けてきた。ナディア氏はまた、人身売買の犠牲となりながらも生還した唯一の国連親善大使である。
両者の命がけの告発は、やがて戦時下の性暴力を可視化することに成功し、加害者の行為に対する責任を追及することが可能となった。人類史上初の、遅すぎた決断でもあるが、大きな前進と言えよう。

性暴力の犠牲となった女性達を代弁するナディア氏。

戦争の影では常に、武器としての性暴力の犠牲となり苦しむ女性達が存在する。ナディア氏は彼女の逃亡を支援した人々によって死地からの生還を果たしたが、彼女のような女性達の多くは自ら命を絶つか、あまりにも壮絶な体験によって心を蝕まれ、或いは果てしない性暴力に苦しみ続けている。だが彼女は、全ての女性のため、失った家族や友人達の、声なき声の代弁者として世界に蔓延する性暴力根絶に向け闘い続けることを選択した。
彼女は受賞者の会見でこのように述べている。「一つの賞と一人の人間だけで目標は達成できない」。

そして、ナディア氏の声は日本にも届いた。
日本人は、彼女の声をどのように捉えるだろうか。

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