楽器と人間との不思議な関連性

4804viewsホタテホタテ

このエントリーをはてなブックマークに追加
決定版-オーケストラ楽器別人間学 (中公文庫)

第2章 楽器別人格形成論

フルート

◆音色
 フルートの音色は倍音(わずかなノイズ)を豊かに含んでいて、神秘的で柔らかい。また、リード、弦などの振動体を持たないために、そのアタック(音のはじまり)もまた若干の柔らかさを持っている。こうしたことから、フルート奏者の性格は、人あたりがよく、優しく柔和であろうと思われる。
 また、初心者のうちは大きい音が鳴らず、ヘタクソでもそれなりの音がするばかりか、練習して失敗してもトランペットのように近所からクレームが来るような事態にはならないことから、奏者は上達の過程において自我・プライドを大きくは傷つけられることなく育つ。
 このことは熱く燃えた体当たり的な性格よりも、むしろ冷静で客観性をともなった、学者肌の性格に奏者を導く。どことなくピントのぼけたような奏者が混じるのは、柔らかいアタックの作用であろう。

◆演奏感覚
 楽器はおおむね金、銀などの貴金属製であり、高級感が漂う。したがって奏者には、それなりに上品な雰囲気がそなわる。

◆合奏機能
 スコアのなかでは、常に最上段に位置し、凡庸な編曲家の手にかかると、ほぼメロディだけを、しかも高音で演奏し続けることとなる。このことは、またしても奏者に俗世間を超越した視野というものを与え、生活感や現実性の薄い、貴族的な考え方へと奏者を導く。
 最高音域をのぞいては、さほど音量のある楽器ではなく、伴奏にまわった楽器が音をしぼるのに苦慮することも多い。習慣的にこうした周囲からの奉仕に慣れてゆくならば、フルート奏者の貴族的なエリート感覚はますます育まれることになるであろう。

ヴァイオリン

◆音色
 まず第一にあげられるのは、音域の制約である。ヴァイオリンは高音楽器であり、おのずからその印象は、ヴィオラ以下の楽器と比べて華麗、明快、繊細といった方向に位置し、それらは細い、かん高い、ヒステリックという側面をも作り出す。奏者もそれにしたがって一般的には繊細、敏感、そしてときには我が強く、許容範囲が狭いおいう印象を与える可能性がある。

◆演奏感覚
 右手に弓、左手に楽器、という両手の分業化である。ヴァイオリンの演奏においては右手に感情を、左手は技術を象徴するとよく言われる。右手に要求されるものは、ボウイングにともなう音色、音量の変化といった「表現」の部分であり、左手には指の細かい「技術」が求められている。この分業は、有名な右腕と左脳の分割分担にみごとに対応している。すなわち感情情緒に対応し右半身をつかさどる左脳が右手、運転技術に対応し左半身を担当する右脳が左手に直結し、合理的な人体の活用がおこなわれているのである。
 ヴァイオリニストの、偏向の少ない安定した人間性は、こうしたことからも導かれるものと思われる。

◆合奏機能
 まず第一に、ヴァイオリンはオーケストラのなかで最大の、同種楽器集団を形成している点に注目したい。自分の音が大勢と混じり合い、共鳴しあって非常に強い音となってゆくという、最強集団の一員としての安定感、安心感とともに、好き勝手は許されないという制約を生む。
 結果として奏者は、忍耐と客観性にたけ、仮面をつけて集団に同化することのできる匿名性を身につけてゆく。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く